「勉強、がんばってと言ってはダメ」ー日本語教師として(7)
国内で教えるのは初めてだったので、分からないことがいろいろあった。引っ越しはしたものの足りない荷物があって、実家に一時帰省したとき、事務の人から電話がかかってきた。成績表にデータが入ってないものがあるというのだ。考えられるのは、その学生が期末試験を受けなかったことだが、着任して間もないので、どう対処していいか分からず、とにかく早目に学校に戻ることにした。学校に着くと、新しく来た教務主任がすでに成績表の件は処理してくれていた。しばらくしてから分かったこともあった。非常勤講師から聞いたのだが、前の専任講師から、「勉強、がんばってと言ってはだめ」と言われたとのこと。彼ら学生が日本に来たのは、日本語を勉強するためでなく、別の目的、アルバイトのためなのだ。それで、たぶん前の専任講師は「勉強、がんばってと言ってはだめ」と言ったのだろう。そのためだろうと思うが、この学校の開校当初、つまり自分が着任する1年前は、授業で教科書を使わずに絵を描いたり、歌を歌ったりしていたということだ。