猟友会の会員減少を考える
河北新報(19日)によると東北各県で猟友会の会員が減っている。高齢化に加えて、昨年12月施行の改正銃刀法が猟銃の所持要件を厳格化し、精神保健指定医等の診断書の提出、射撃場での技能講習、75歳以上の認知機能検査を追加したことで、会員減少が加速しそうだとの解説だ。第1種銃猟免許を持つ猟友会会員の数は、6県全体で12,839人。全国でも10万人を割り込んだという。所持要件の厳格化は、猟銃を用いた乱射事件が契機だというが、有害鳥獣の駆除の委託先でもあるため、猟友会の会員減少は自治体にとって痛手のようだ。報道の趣旨からすると、「会員数の減少」が特に有害鳥獣駆除の観点から懸念されるということで、今後減少を加速化させそうな要因として免許の厳格化を指摘する。厳格化と会員数減少にどんな関係があるのか、厳格化以外の要因、例えば高齢化の要因、また免許保有者と入会者の関係はどうなのだろうか。つまり、もともと農林業従事者が減っていることで免許を保有しようとする人も減っているのでないか、また、行政が猟友会という団体に着目するのは委託先とする事情があるからだろうが、保有者はすべて入会しているのだろうか。いずれにしても、イノシシなどの被害が近年激増していると聞くので、駆除の実行部隊の確保は大きな課題に違いない。法の厳格化については、河北新報も行き過ぎだとまで論じてはいない。ただ、精神保健指定医の診断など負担が大きいとする狩猟者の憤りを紹介している。たしかに、指定医の診断や認知機能検査など、銃を持つ人を信用しない前提に立った厳格化のようにも思える。しかし、人の安全を最重視した上で、鳥獣保護と狩猟の必要性など総合的に検討を重ねた上の立法なのだろうから、まずは受け入れるしかない。とすれば、免許を取得しようとする人が自然的には増えないことを問題とするのならば、敢えて議論の図式を立てると、(1) 一般的な銃猟免許のニーズは自然に任せる(農林業従事者の減、高齢化などにより減少は仕方がない)(2) 公益的な観点からの有害鳥獣駆除は別に考える(委託先は別途確保する、又は行政自ら捕獲する。或いは銃猟以外の捕獲の方法を検討する)という政策議論を進めるべき事になるのでなかろうか。(なお上記(1)では、一般的な銃猟免許ニーズを農林業従事者の私益的な鳥獣駆除と捉えたが、事実認識として正しくないかも知れない。不勉強です。)もちろん、免許ニーズが減ることで、「公益的ニーズ」も増える(私益による自発的捕獲が減少するから行政による公共的捕獲の需要が増す)という点で、(1)(2)は相互に影響する。また、これらの外に、そもそも有害鳥獣の増加という要因もありそうだ(さらに、農林業従事者の減が増加を招いているのか)。とすると、各要因が相互干渉する大きなシステムの中で、とるべき政策を見定めて、効果を予測すべきことになる。鳥獣保護と狩猟の適正化という立法内容自体が、異質の価値の調整であるのだが、これに加えて有害鳥獣駆除行政のあり方も、ねじれた構図の中で決定していかねばならない。担当する当局は大変だとおもうが、政策分析の観点からは、上記のように大変興味深いテーマのように思える。