宮城の民間医療伝承
面白い本を手にした。ハゲに癌が少ない、男がオタフクになると子種がなくなる、味の素は頭を良くする、などなど。■宮城県医師会編『医療の言い伝え1,000題-医学迷信を考え直す-』宝文堂、1979年宮城県地域婦人団体連絡協議会が共賛とされている。かねてから宮婦連の健康教育に協力してきたが、宮婦連の会員が多数集めた県内の民間療法について、その誤りを医学の見地から正し、悪弊を一掃しようとして企画したのだという。しかし、医師会の医師達が解説にあたるうちに、迷信が多いと予想したが、古人の尊い生活の知恵が現代に生きていることに感銘を覚えた部分が少なくなく、近代医学と民間医療の接点が極めて多いことが認識された。医学的に説明できないものでも、例えば行儀を戒めたり、妊婦の体を気遣ったり、間違った子育てを正すものなど、医学を越えた幅広い生活の知恵として伝承されたものも多い。また、医学伝承に本格的な医学的解説を施したものは皆無で、企画を聞き及んだ東京の数社から出版の申し入れがあったが、県医師会会長(松川金七氏)の意向で郷土出版となった、と記されている。県民の健康を願い、誤れる民間療法を注意し、また古人の知恵に医学的解説を行う。核家族が増え、食べ物や医薬品も多様化した昭和50年代に、このような本が企画出版されたことが、とても興味深い。構成も、診療科(体の部位)別になっており、一家に一冊備えていて役に立つだろう。また、ふるさとの言い伝えを知る読み物としても楽しい。