東北各県の特徴的な名字と珍名
再び、各県の名字の話題です。各県のメジャー名字について。◆青森県工藤(1位)は全国では65位。平安後期の武士、工藤祐経(すけつね)が祖で、分流が鎌倉時代に東北の地頭となった。福士(30位)も全国では990位。成田、三上、対馬、古川なども上位。珍名では、哘(さそう)。向こうに行こうか、と口で誘うから。地名にもある。また、治部袋(じんば)は、元は陣場で、石田治部少輔(三成)が陣を構えたため。◆岩手県佐藤(1位)、佐々木(2)、高橋(3)、千葉(4)、菊池(5)など。全国279位の及川(9位)、小野寺、小笠原、八重樫、郷右近など。蟇目(ひきめ)は、鏑矢を使った神事の意味の宮古市の地名から。人首(ひとかべ)は、坂上田村麻呂が取った鬼の首が実は人の首だったことに由来。西風舘(ならいたて)も珍名。◆宮城県宮城県の佐藤(1位)は義経忠臣の佐藤継信・忠信兄弟の影響が大きい。菅原は道真の後継を称している。高橋(2)、鈴木(3)、佐々木(4)など。阿部(5)は奥州の大姓で、平安中期以降、北上川流域の一大勢力に。宮城県と福島県にある珍名で、百足(むかで)は、大百足を退治した人と、伊達藩の百足衆の末裔、との2説がある。◆秋田県1位は佐藤だが、高橋(2)も県民の5.6%を占めている。佐々木(3)、伊藤(4)、鈴木(5)など。特有のものは、三浦、畠山、小松、柴田、鎌田、成田など。珍名で及位(のぞき)。◆山形県佐藤(1)、高橋(2)、鈴木(3)、斎藤(4)、伊藤(5)など。後藤(9)は、藤原北家、利仁の子孫が義経家臣となった際に後藤太と名乗った。五十嵐(10)は、新潟市の五十嵐(いそあらし)浜が起源で、磯の嵐が訛って、いそらし→いからし、となった。新潟では今でも「いからし」という。他に、梅津、渋谷、小関、板垣、安孫子、寒河江、東海林などが多い。左沢(あてらさわ)は、アイヌ語の日陰の意味のアテラから。左の沢が日陰だった。◆福島県佐藤(1)、鈴木(2)、渡辺(3)、斎藤(4)、遠藤(5)と続くが、特徴的なのは、菅野、渡部、橋本、星、五十嵐、根本、佐久間。橋本は地名にも多く(全国最多)、星は会津から新潟にかけて分布。小さい盆地を意味し、平野部に降りると星野になると言われる。円谷は全国5300人のうち2600人が福島県。大越(二本松市周辺)、宗像(田村郡周辺)。参考 KKベストセラーズ『一個人別冊 日本人の名字の大疑問』2017年9月なお、この本にはクイズとして、東京23区と同じ名字の話題。最も多いのは、中野(7万世帯)、次いで渋谷、足立など。新宿や千代田なども希少だが存在。名字として存在しないのは、文京、台東、世田谷の3つだそうだ。■関連する過去の記事(東北と名字。また、姓について) 名字の都道府県別ランキング(2012年9月28日) 都道府県名と同じ名字(2011年12月19日) 各県の名字ベストテンと特色ある名字、珍しい名字(2011年12月18日) 宮城県の由緒ある苗字(06年8月1日) 氏と姓と名字の成り立ち(2012年9月29日) 姓と苗字の違い(06年8月23日) 苗字と名字の違い(06年5月22日)