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2024.08.27
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カテゴリ:宮城


以前から気になっていたこと。栗原市内に栗原(くりばら)という地区名がある(正しくは栗原市栗駒栗原で、この後に(字表記を挟まず)小字名が続く。「栗駒栗原」が大字名)。旧栗駒町尾松地区の一部で、栗原(くりばら)簡易郵便局の名にもなっている(もっとも同郵便局の所在地は栗駒菱沼)。


この地区名の経緯、また、改めて現在の市名である栗原の名の由来について、栗原郡教育會編『栗原郡誌』(大正7年初版、平成10年復刻、伊藤真正社発行)をみてみた。

1 栗原の名の由来

 栗原郡の「栗原」の由来については以下のように書かれている(上巻p8、なお当ジャーナルで旧字体を改めた部分有り)。
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二.栗原郡名の由来

古への栗原郡は伊治城地の一部にして和名抄の所謂栗原四郷の地なりしを中世葛岡郡の一部、長岡郡の西一半及び新田郡の全部を合併し、更に近年は新田郡に属する佐沼南北の地を割きて之れを登米郡に又た鬼首村を割きて玉造郡に編入し以て今日に至れるものとす

伊治及び栗原の名の始めて史に現はれたるは称徳天皇の神護景雲元年にして続日本紀に

  神護景雲元年十月辛卯勅見陸奥所奏即伊治城作了自始至畢不満三旬朕甚嘉馬宜加酬賞式慰匪窮云々
  同年十一月乙巳置陸奥國栗原郡本是伊治城也云々

とあり、即はち栗原郡は伊治城作了後同城下の地に新たに建置せられたるものに係れり、而して伊治城は現今の富野村城生野に置かれ、同城下の地たる伊治村は古人の新田郡即はち現今の登米郡の西境より北は現今の若柳、西は富野村に達する間、迫川を以つて圍まれたる一帯の平野なりしが如く、(和名抄、郡郷の部に、栗原、清水、仲村、會津の四郷あり、會津はエヅにしてイジの転化せるもの、即はち古への伊治村乃至伊治郷なり)栗原郡は今の尾松村字栗原四辺の地にして後には今の栗原郡南部旧十九邑の地を栗原の荘と称し遂に現今の郡名として伝へられるるに至れり

栗原の地名の起原に就きては伊治をコレハルと訓じたるより起れりとなすものと或は夷語より来れるもの等種々の異説あつて定かならず

栗原郡旧地考云
○ 今も栗原村とて二迫の内にあり 栗原寺の跡もかずかず残りて本堂屋敷、西の坊屋敷などその他彼是と屋敷名は残れり、これぞ古の栗原の里の本居にて四方八面皆此村なりけんを田所も開け戸口も多くなりて姉歯の里などや先づ出来そめけん云々
○ 栗原郡と名つけられたるは必ず近きあたりに栗原といふ名たたる所有るに因りて栗原をもて名付けられつらん、元は今の栗原村をさすにやあらん、姉歯の松、栗原寺など今に絶えせぬ名高き所あればなり云々

復軒雑纂云
○ 留守文書元弘四年二月晦日のもとに陸奥二迫の栗原郷内外栗原並片子澤内云々など見えて当時尚ほ栗原郷の名を存せり云々
○ 白河藩の廣瀬蒙齋が陸奥五十四郡考補遺には伊治は訓読「これはる」にて栗原と声近しといへり若しくは伊治城管下の地を郡に建てらるる時、伊治の音読なるに新たに訓を施し声の近きを以て栗原の字に作り新に郡に命名せられしものか云々

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下巻p261では(各地域の地誌の部分)、尾松村の経緯について次のように書かれている。
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明治八年町村分合の際、上下稻屋敷を統一して稻屋敷村及び八幡、櫻田の二村を合して八幡村、菱沼、栗原を合して栗原村と称し、同九年宮城県の管轄に移り、同二十二年市町村制移行に際し、栗原、八幡、稻屋敷の三村を合して旧荘名を襲ぎ、尾松村と称するに至れり
------------
この後に、安永七年七月書上風土記における各村(稲屋敷、櫻田、八幡、栗原)の記載が紹介されている。いずれも、尾松荘(表記は、尾松荘、尾野松庄、小野松庄、などと異なるが)に属しているとされている。

2 行政上の村の推移

藩政時代は栗原郡は(本)栗原、一迫、二迫、三迫、佐沼の5区に分割し、このうち二迫には14か村。すなわち、姉歯、泉沢、稲屋敷、鶯沢、片子沢、栗原、桜田、城生野、梨崎、菱沼、文字、八幡、渡丸、富の各村である。
 明治8年の統合では次のとおり。
 ・富野村 ←富村+城生野村
 ・八幡村 ←(合併)桜田村
 ・栗原村 ←(合併)菱沼村
 ・姉歯村 ←(合併)梨崎村
明治22年町村制施行で栗原郡は22町村、かつての二迫地域を中心に記すと次の通り。
 ・富野村(単独)
 ・尾松村 ←稲屋敷村+栗原村+八幡村
 ・姫松村 ←王沢村+片子沢村+宝来村
 ・沢辺村 ←沢辺村+姉歯村+大堤村小堤
昭和の合併により以下となる。
 ・築館町(昭和29年) ←築館町+玉沢村+富野村+宮沢村
 ・金成町(昭和30年) ←金成村+沢辺村+津久毛村+萩野村
 ・栗駒町(同上) ←岩ヶ崎町+栗駒村+尾松村+鳥矢崎村+文字村+姫松村(片子沢、宝来)
 ・一迫町(同上) ←一迫町+金田村+長崎村+姫松村(王沢)
そして、平成17年に栗原市。現在の住所表記については下記記事を参照。
■関連する過去の記事(市町村合併後の大字小字の表記)
 さらば富谷町...そして「字」も(2016年10月9日)
 市町村合併と住所の表記(07年8月25日)

3 (参考)大崎における「大崎」の場合

 大崎市古川に大崎の地名があるが、名生館と大崎氏の歴史を踏まえて明治に大崎の村名を採用し、変遷を経て(東大崎村、西大崎村など)、いまでは合併新市も名称も同じで大変に複雑な構造になった。
 大崎市古川大崎は、次のような経緯をもつ地域である。
・明治8年 大崎村←名生村+伏見村
・明治22年 大崎村←大崎村+新田村+清水村+下野目村+南沢村
・明治29年 (分村)→東大崎村(大字大崎・新田・清水)、西大崎村(大字下野目・南沢)
・昭和25年 古川市大崎
・平成18年 大崎市古川大崎
(↓画像 「大崎市古川大崎」の区域。なお、隣接して「古川清水」「古川新田(にいだ)」の区域がある。)

(過去記事 大崎市の戦中地名(2024年03月20日) を参照下さい。)

■関連する過去の記事(栗原の名の由来、古代の蝦夷の歴史など)
 照明寺と伊治城跡(栗原市)(2024年08月25日)
 アテルイの里、田んぼアートの大谷翔平(奥州市)(2024年08月18日)
 城館の歴史(その2 北東北の城館)(2021年9月25日)
 覚べつ城を考える(2015年1月2日)(旧川崎村の河崎の柵)
 日本の大合戦 東北は5つ(2012年3月4日)
 多賀城の遺跡認識(下)(2011年11月19日)
 多賀城の遺跡認識(上)(2011年11月18日)
 近世までの東山道と中山古街道、七北田街道(2011年10月23日)
 東北の「館」を考える(2011年9月25日)
 栗原と伊治について(10年7月25日)
 多賀城の基礎知識(後編)(06年8月8日)
 多賀城の基礎知識(前編)(06年8月7日)
 栗駒と蔵王の名前の由来(06年7月28日)

■関連する過去の記事(荒瀬橋)
 国道4号荒瀬橋の事故(09年1月14日)

■関連する過去の記事(大崎市内の大崎地区について)
 西古川駅(大崎市)(2024年06月22日)
 名生館から西古川へ(大崎市古川大崎、古川斎下)(2024年06月19日)
 名生館官衙遺跡、名生城跡(2024年06月18日)
 東大崎駅、大崎神社(2024年06月14日)
 合併と広域地名を再び考える(岩沼と名取)(2024年03月22日)
 大崎市の戦中地名(2024年03月20日)
 合併と広域地名(名取市、柴田町、本吉町、宮城町など)(2024年03月19日)
 十二支と天地人(亘理町)(2024年03月12日)
 亘理町を知る(地域区分、大字など)(2024年03月10日)
 地名(市町村名)の付け方の類型論(2024年03月05日)
 中世宮城の名族たち(その2)(2016年12月26日)
 中世宮城の名族たち(その1)(2016年12月23日)
 古代人の移民地名(玉造、加美、志田、色麻など)(2013年4月16日)
 「西古川」小学校と「古川西」中学校(2013年1月27日)
 東北の「館」を考える(2011年9月25日)(宮城の古代・中世の「館」)
 葛西氏と大崎氏(10年9月22日)
 丹取郡と名取(10年3月17日)
 丹取郡の成立と大崎平野への移民(10年3月16日)





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最終更新日  2024.08.27 23:44:17
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