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2024.11.01
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カテゴリ:宮城


1 明治15年のコレラ流行と宮城県の対応

明治政府は、明治10年に虎列刺病予防法心得を各府県に達し、明治13年に「府県衛生課事務条項」「町村衛生事務条項」を整備、さらに伝染病予防規則を整備して感染症予防法令が確立した。

町村衛生委員は、町村内の世話をする担当者で、住民の公選。宮城県でもおよそ200から250戸に1人選出された。明治13年5月には宮城県独自の虎列刺病予防手続(全67条)がつくられ、コレラ予防の内容が整理された。

具体的には、患者の把握(医師、町村衛生委員、村長、巡査などが関わる)、船舶検査、掃除、飲食注意、検疫委員の選出(流行時)、隔離(衛生委員、警察、検疫委員)、消毒・焼却、吐瀉物処理、死体の処理(警察)、群衆禁止、である。この流れの全体について、町村衛生委員や警察が関わる。

このうち、隔離に関しては、管内で患者の発生を知った場合、衛生委員は家族が感染しないよう患者との接触の仕方について説明し、警察は患者宅の門戸に病名票を貼付し、往来や出入りを取り締まる。自宅療養の患者は衛生委員と検疫委員が検分し、自宅療養が行き届かない場合は避病院へ入院を説得すること、とされた。

明治15年のコレラ流行は全国で51,631人の患者と33,784人の死者を出した。明治12年の流行を免れた宮城県にとっては、維新後初めての本格的流行であった。患者数3,977人、死者は2,361人で、患者数は東京に次いで全国2位、死者数は3位であった。最初の患者は7月18日に亘理郡荒浜、伊具郡を経て間もなく仙台区に伝播し、9月初旬に最も激しく流行。

宮城県の対応は、6月半ば神奈川県の流行を聞いたことから、船舶検査手続を定め、各港湾に検疫所を設け、医員や警察を派遣。6月18日船舶検査に着手する。しかし、荒浜の発生を受け、7月21日に警部長、衛生課長が出張し、巡査、村役人、衛生委員を指揮して予防消毒を実施。避病院・火葬場の設置、交通遮断などの処置。それでも封じ込めはむずかしく、仙台区に患者が発生すると、宮城郡荒巻村台原に避病院の新築を決めた。患者の吐瀉物は広瀬川に投棄し、沿川町村に川水の使用を禁止する。

7月23日には、諸興行、寄席などの営業停止。7月31日県庁内に検疫事務局設置、各郡区に検疫事務所設置。8月には、各郡区のほとんどで発生を受け、臨時巡査225人、医員68年、検疫掛67人を派遣。

流行衰退を受けて9月19日検疫事務局閉鎖、各郡区の事務所も10月25日までに漸次廃止。

2 流行現場の実態と避病院(ひびょういん)

人権を無視した警察の強引な消毒や隔離の対応が、コレラ自体とともに人々に恐怖感を植え付けた。避病院は、応対する医師や看護婦が不十分で、しかも破れた紙障子に消毒薬の臭気が鼻をつく劣悪な環境で、実態は患者の収容施設に過ぎず、自然治癒をするごく少数を除いては死を待つところであった。

実際、維新後初めての全国的流行である明治12年には、住民が避病院設置に反対したり、警察や医師を襲うコレラ騒動が各地で発生した。

避病院については、上述の宮城県の虎列刺病予防手続(明治13年)で詳細に定められた(第18条-第40条)。まず、位置は往来の多い路傍や井戸・川の近くは避ける。人家の少ない村落では相当の空家を用いても良い。おおよそ人口千人に患者1人の割合で設けること。構造は、重症、軽症、快復期の三種類の病室を設けること。また、従事者や患者親族への対応なども規定されている。

さらに明治15年には流行の中で避病院規則が出され、具体的な取り決めの他、患者入院料は一日30銭、貧困者は免除、などとされた。

明治15年における各府県設置の避病院の数は107で、そのうち宮城県は26で第1位だった。

■出典
竹原万雄(たけはらかずお)『明治時代の感染症クライシス:コレラから地域を守る人々』(よみがえるふるさとの歴史 5 宮城県石巻市)、蕃山房、2015年

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最終更新日  2024.11.02 06:28:41
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