吉田修一『パークライフ』を読んだ。芥川賞受賞作ということで期待して読んだ。結果は、柳美里の『家族ゲーム』を途中で投げたような、吉本ばななの『キッチン』をピンと来なかったような、要するに私の期待とは異なる作品であった。
『パークライフ』というタイトルと作者の風貌より、ある青年がホームレスとなって、そこから見える風景が…と勝手に思い描いていたのだ。主人公の暮らしぶりは中流以上だし、出てくる人物に悪い人はいないし、誰も病んでいないし、大きな事件もない。こんなディテールにこだわった小説は書くほうは書くほうでそれなりに大変な割りに、こちらはスッキリしないのだな。突然、警察官が追いかけてきたり、猿が暴れて台所を壊して欲しいものだ。読んでいて、主人公に感情移入できない自分が東京の暮らしと完全に離れてしまったことを確認した次第。
六本木ヒルズのイルミネーションを見るのに、深夜の首都高をクルマですっとばすという暮らしに価値を見出すしかないなオレは。
それにしても、事件が起きない小説で芥川賞ってことは、やはり吉田修一氏は第一級の作家なのだろうか。寸止め文学っていうのかな、こういうの。
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最終更新日
2006年11月19日 00時16分16秒
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