『3日で運がよくなるそうじ力』って…。そうじをすれば運勢が上がる。これはなんというかアタリマエのことだなあ。現在の自分を棚に上げて、老人ホームで働いていた頃、朝のオムツ交換のあとの室内、廊下、トイレの清掃は、精神的にも気持ちがよかった。トイレの便器をきれいにすることはけっこういい気持ちになる。ゴム手袋をはめてね。なにせ老人ホームであるから、汚物と格闘することも多い。認知症の人が尿パッドをトイレに詰まらせて、汚水があふれることもよくあった。あのつまった便器に手を突っ込む。肘まで浸かる。そんな毎日は、ルーチンワーク。職員同士のチェックもけっこう厳しかった。汚れの残りがあると、陰口をたたかれたものだ。
あの頃の私はそうとうに開運な行為をしていたことになる。いやまて。自分のウチではまったくやらぬ。
どこかの荒れた高校の教頭が、便所掃除をきっかけに学校を立て直した。そんなエピソードもそうじブームを後押しする。よいことなのは確かだ。確かだけど、ここでもニセ科学の匂いがほのかに漂ってくるのだ。「水からの伝言」に村主史枝のごとく耳を傾けている人とそうじ力で運勢を上げている人はけっこうダブっているような気がする。道徳が嫌なかんじで介在しているのだな、いずれも。そうじとスピリチュアルの融合。その切り口はなかなかのものだ。掃除をするな!とはいえないだけにコイツは手ごわいぞ。
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