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テーマ:仕事しごとシゴト(23735)
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しとしとと雨が降っていた。就職面接の会場は、住所がある浄土真宗の境内となっている。ようするにお寺にカイシャがあるわけなのだな。クルマで出かけた私はもっとも遠くにある参拝者用駐車場に止めて、寺の中心へと向かった。お寺は住宅地の中にあって、どこが入り口なのかわかりにくい。早く着いたので、とりあえず参拝をしようと思ったのであるが、参道が見当たらぬ。よくやく阿弥陀堂に行き着いたのだが、扉は閉まっており、どうやってお参りしたらいいのかわからなかった。じつをいうと、阿弥陀様は初めてだった。めんどうになって、インターホンで社務所を尋ねた。
あまり愛想のない男が応対し、私はカイシャ内に招かれた。彼はスリッパを履いていたが客人にスリッパはなかった。通された場所は本堂のようで伽藍の向こうに阿弥陀如来の像が見えた。14時にアポで、私は10分ほど前に到着したのであるが、着席するとすぐにその男より1枚の紙を渡された。「有料老人ホームの施設長として、あなたならばどんな施設経営をするか?」というような設問があり、200字以内で、と書いてある。さっぱり考えていないので、ちょっと困った。まあいいや、とさらさらさらとサインペンで作文を書く。10分ほどで書き終えると、4人の男が登場した。私は文字数をきっちり数える。オーバー分はうまくトルツメをした。さて面接開始である。私の正面には住職であり理事長と呼ばれる経営者が座り、位の高い順に3人が座っていった。3人は緊張した面持ちである。 「いきなり施設長といってもねえ。」「はじめは、うんたらかんたら…」 私が有料老人ホーム未経験であることをまずジャブとして突いてきた住職。穏やかな物腰だが、なかなかのやり手である。私から見て右隣の総務課長といった風情の担当者がそれに追随する。その右の係長が右に追随し…(ry)。私は出入り口近くの末席に座ったのであるが、相手の力関係がすぐにわかってやりやすかった。だが、私の表情は強張っていたようである。鬱だからそれが出たのだろう。総務課長の男に第一印象が固い旨を指摘された。私はニヤリと笑うしかなかったが、ま、しょうがない、これでいいだろう。 特養出身の私に、有料老人ホームの実情を知れといわれても無理な話だ。だから、ジャブに対してはグローブを差し出して受けるしかなかった。ただ、もしも、この求人が「施設長」ではなく、ケアワーカーだのと別の職種をはっきり提示してきたら、すぐにリングを降りるつもりでいた。職安にチクっちゃうぞ。 そのあたりの攻防が、互いに非常に回りくどく行われ、私は施設長以外であるなら、こちらから願い下げであることを察してもらうべく振舞った。住職は途中退出。安くてよい労働力が獲得できればそれでよしという按配。素直でまっとうな経営者である。住職退出後、総務課長は、話を具体的に、また、できれば獲得したいそぶりをほんの少しみせた。ディフェンス能力に優れた人事担当者である。介護業界はディフェンスが命である。彼の振る舞いをみて、これで落とされるなら、まあいいや、と感じた。縁がなかったということだ。私の側からいうと彼の私を見る目がなかったというか、小心が出たということだろう。 最後に質問はないかと訊かれて、「私の給料はおいくらほどいただけますか?」とダイレクトに尋ねた。それは3人で協議して電話で連絡するとのことだった。 住職の直感によりこいつは便利だと思われれば、採用となり、3人は具体的な詰めへと入るだろう。縁があるかないか、それは阿弥陀様のみご存知の阿弥陀くじ。くじに当たったとぬか喜びし、待遇面で損のないように心得よう。 それでは皆様、南無阿弥陀仏。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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