突然の別れ
オレはおまえを棄ててやった。別れは突然だった。これからも頑張っていこうと思っていたから、喪失感が強くて日記にも書くことができなかった。あんなヤツ、棄ててやろうと思いながらずっとこれまでやってきた。金がかかる女なのだ。6万とか10万とか25万とか、財布にいくらもないオレサマの金をもぎとっていく。ローンすら借りた。ファンデーションも舶来の製品でないと肌に合わなかったりする。オレがいけないところもあった。デリケートな相手に対して道産子のように扱った。おれはあいつがガイジンであることを意識したくなかったんだ。友人に紹介するときもいつも照れくさかった。なんか己の虚栄心を満たしていると見透かされているそうな気がして。オレはあいつがガイジンという理由で付き合っているわけではなかった。あいつのルックスに惚れたんだ。いまでも素晴らしいと思っている。飽きることがなかった。10年以上もだ。今だって好きなんだ。あいつの中に入るとオレはほっとした。夕闇の中でいつもあいつに包み込まれていた。なにもせずにじっとしているだけでも心がなごんだんだ。そんなおまえを、今日、棄てた。理由だって?金がかかりすぎるからだ。40万円といわれて、オレは払う気でいた。だが、それで2年間モンダイなくいく保証はないといわれた。そろそろ壊れだす時期なんだと直感した。クーラーを15万かけて直しても、直したことによってほかの管にストレスがかかって壊れることが多いという。うちの親父は「クーラーの効かないクルマは嫌だ!」と強行にいいはった。それがオレの気持ちを変えさせた。修理代、車検代、とメンテナンスに国産車の3倍の金額をかけてきた。みかけはコロナくらいのものだが、レクサスに乗っていたようなものなのだ、オレは。それは見分不相応な生活であった。ガイシャから国産に乗り換えることは、私の生活の根幹を変更することを意味した。思えば、96年にあのクルマの新車を買った頃に、最初のガイジンのガールフレンド、タイ人のミキとつきあいだしたのである。あの女も金がかかったなあ。クルマと女とで、まるで新車のメルセデスを購入したような出費をしていた。別に後悔はないが、振り返れば、私の金銭感覚がおかしくなったのと、ガイシャ購入の時期は重なっていた。オフクロも施設に入って、我が家は金がかかる。それで、シトロエン人生とはおさらばすることにした。C5の中古も検討したが、5年後にまた現在の悶々とした状況がやってくるかもしれぬと思い、あきらめた。次のクルマはすぐに買わないと通勤できないので一晩で決めた。プリメーラである。25日に、極上のP12プリメーラを落札した。知り合いの中古車屋のおっさんに業者オークションを頼んだのである。一般の中古車屋で買うよりも15万くらいは安く買えたようだ。ピカピカで匂いのする、新車みたいな1・3万キロの中古車である。そのインプレッションは、また改めて。