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不登校・ひきこもり・ニートを考える

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巨椋修(おぐらおさむ)

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2006年06月27日
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カテゴリ:対処案
イギリスの首相に、ベンジャミン・ディズレーリという人がいました。


この人はユダヤ人であり、子供時代にすいぶんといじめを受けたといいます。


さて、ディズレーリは、いじめを克服するために何をやったか?


彼はボクシングを習いました。


ボクシングを習って、強くなってから、いじめっ子たちに勝負を挑みました。


そして、身につけたボクシングの技を使って、いじめっ子たちを打ち倒し、彼はいじめを克服しました……




このディズレーリの逸話は、『いじめ克服』本にもよく出てくるハナシでもあります。




似たようなハナシも、またよく聞く話しなのです。


いじめられっ子が、ずっとガマンをしていて、ついにガマンしきれなくなって、いじめっ子を殴ったら、それ以来いじめはおさまった……




ちなみに、いまこれを書いている巨椋修は、総合格闘技の師範であります。



その巨椋がいいましょう。






ディズレーリのやり方は、決してオススメしない!





そうやっていじめを克服した人は実際にいるのです。





でもオススメしない。





このようなやり方を進めようとする人は、いじめや暴力の実態を知っている人とは思えないのです。



わたしは、お金を取って、殴ったり蹴ったり、投げたり、寝技で関節を決めたり、はては馬乗りになっていかに上手に相手を殴り続けるかといった技術を教えている男です。


プロの選手や、他道場の先生方もわたしに教えを乞いにくることもあります。


恥ずかしい話しですが、競技以外のそういった暴力沙汰に立ち会ってしまったり、巻き込まれたこともあるのです。



そのわたしが言うのです。



あまりオススメできないと……



なぜか?



まず、いじめに対して、ボクシングなり空手なりを学ぶのが効果がないとは言わない。



ではなぜオススメしないか?



1、人はそうカンタンに強くはなれない。



2、生兵法はケガのもと。



3、いじめのような暴力と、格闘技とはまったく別物である。



4、いじめられっ子が、厳しい稽古についてこられるかどうかはわからない。



5、道場の中でもいじめられる可能性がある。






いじめなどの暴力・ケンカなどと格闘技は全然違うものなのです。



多少強くなっても、相手が2人3人だと、まったく違ってきます。


「おまえ空手習ってるんだってぇ~、オレたちにやってみろよ」と、からまれることあります。




また、稽古は大変にキツイのです。


打撲痛、筋肉痛は当たり前なのです。


そうしないと強くなれないのですが、それは苦行に等しく、ほとんどの人は、つらくてやめてしまうのです。


やめてしまえば「ああ、やっぱりオレはダメ人間なんだな」と、落ち込んでしまうのです。



また、続けていると3ヶ月くらいで、技や力は最低限のものはできるようになるですが、その程度で絶対に勝てるとは言い難いのです。




もうひとつ……



いじめられっ子の人が道場に入門して、やっぱりいじめられてしまうことがあるのです。



これは、格闘技や武道の稽古というのは、パートナーに対して、絶対的な信用がないと一緒に稽古ができないということにつながります。


つまり、究極のコミュニケーション能力が要求されるわけです。


カンタンにいいますと、相手が殴りかかってくる。


それを受けて反撃という“型稽古”の場合、


あくまで練習なんですから、本気で殴ってはいけないわけです。


当たる直前で止めなければいけない。


あるいは、軽くあてる程度にしなくてはいけない。



反撃の人も、そのようにしなければならないのが基本です。



このルールが守れるかどうか?


この“あ”“うん”の呼吸がわかるかどうか?……





過去、いじめられっ子だと思われる人が入門してきたとき、多くはそれができなかったりしました。



できないために、いじめられっ子の相手をした人が重傷を負い、緊急入院、生命の危険があるため集中治療室へ……



ということもあったのです。


練習のとき、力の入れ具合や、“やってはいけないこと”を繰り返しやるので、わたしも何度となく注意をしていたのですが……




幸い、一命はとりとめましたけど、やられた門下生は二度とわたしの道場へ戻ってくることはありませんでした。

実は、格闘技ができなくなる体(脳の損傷ため)になってしまったのです。



やった方(いじめられっ子)はというと、他の道場へ移ったのですが、人間関係とか、そういった稽古中のやりとりが、上手くできなくて、他の道場へ移籍をしましたが、やっばり「困ったちゃん」で、うとんじられ、やめてしまったようです。


このようなことは実際あることなのです。



それ以外でも、いじめられっ子が入門してきて、“あ”“うん”の呼吸が、何度言っても分からない。


とうとう先輩から


「へえ、そうなの、そう言う風にやってもいいんだね」


と、したたかに反撃されてしまうということもあり、その人は辞めてしまうということもありました。


そういったことがあるたびにわたしは、自分の指導力のなさに落ち込んでしまいます。





だから、ディズレーリのハナシようには、なかなかいかないのです。


格闘技を身につけて強くなりたいという気持ちは凄くよくわかるのです。


格闘技は個人競技と思われがちなのですが、暴力を競技化したものであり、パートナーや仲間との絶対的な信頼感、礼儀のというものが、他のスポーツ以上に必要になってきます。


『いじめに対抗するために格闘技をやる』というのは、結構なことなんですけど、むしろそれ以上に、人間関係能力を高める ということが大切であるということも知っていてほしいのです。



それから、ディズレーリのように、


「いじめられたら、自分を鍛えて、相手を叩きのめしてしまえばいい!」


というのは、現実を知らない人のタワゴトくらいに思っておいた方がいい。


逆にやられてもっとひどくなる確率も高いんです。



そんな安物の青春漫画ようなことを言う人は、まったく実態を知らない人としか言いようがないと思いますね。









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Last updated  2006年06月29日 15時34分37秒
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