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カテゴリ:映画
「ブラックパンサー」(原題:Black Panther)は、2018年公開のアメリカのスーパーヒーロー映画です。アメリカン・コミック「ブラックパンサー」の実写映画化作品でマーベル・スタジオ制作、ウォルト・ディズニー・スタジオ・モーション・ピクチャーズ配給、「マーベル・コミック」の実写映画を同一の世界観のクロスオーバー作品として扱う「マーベル・シネマティック・ユニバース」作品でもあります。ライアン・クーグラー監督、チャドウィック・ボーズマン、マイケル・B・ジョーダン、ルピタ・ニョンゴら出演で、漆黒のスーツに身を包んだヒーロー、ブラックパンサーと、超文明国家ワカンダの国王という2つの顔を持つ男ティ・チャラが、国の秘密を守る為に悪と戦う姿を描いています。アフリカ人が主人公の映画で、アフリカ系アメリカ人の監督、キャストや制作スタッフもアフリカ系の人材が集結、「アベンジャーズ」を超えて北米で史上最高の興行成績を獲得したスーパーヒーロー映画です。
「ブラックパンサー」のDVD(楽天市場) 【スタッフ・キャスト】 監督:ライアン・クーグラー 脚本:ライアン・クーグラー/ジョー・ロバート・コール 原作:スタン・リー/ジャック・カービー 製作:ケヴィン・ファイギ 出演:
ほか 【あらすじ】
【レビュー・解説】 アフリカ系の映画人が制作し興行記録を塗り替えた画期的なスーパーヒーロー映画は、アフリカ的に描きながらも普遍的テーマを中心に据えた、世界に受け入れられる娯楽大作です。 マイノリティが制作、アフリカ的に描きながらも幅広く受け入れられる娯楽大作 マイノリティが記録を塗り替えた画期的スーパーヒーロー映画 アフリカ系アメリカ人による監督・脚本、キャストやスタッフもほとんどがアフリカ系という体制で、北米におけるスーパーヒーロー映画の興行成績の記録を塗り替えた、画期的な作品です。 スーパーヒーロー映画北米興行収入ランキング
監督・脚本を務めた初めての長編映画「フルートベール駅で」(2013年) で一躍、注目を浴びたライアン・クーグラー監督は、二作目で「ロッキー」シリーズ7作目のスピンオフ作品「クリード チャンプを継ぐ男」(2015年)の監督に抜擢され、シリーズ最高の評価を得るととに、老トレーナーを演じたシルベスター・スタローンがアカデミー助演男優賞にノミネートされるという快挙を成し遂げました。マーベル・スタジオが彼に声をかけたのは「クリード チャンプを継ぐ男」が公開される前でしたが、その才能を見抜いたスタジオはマーベル・シネマティック・ユニバース作品最年少の監督として彼を大抜擢、クーグラー監督は見事、この期待に応え、公開時31歳という若さにしてアフリカ系アメリカ人監督作品の興行成績、アフリカ系メインキャストによる作品の興行成績の記録も塗り替える力量を発揮しました。もちろん、この若き監督を支えるマーベル・スタジオの底力があればこそですが、人種・年齢を問わず、監督の才能を見出し、画期的な結果を生み出す、如何にもアメリカ的なサクセス・ストーリーです。 ブラックパンサーのキャラクター・フィギュア(楽天市場)
アフリカ的に描きながら普遍的テーマを中心に据えた娯楽大作 本作の舞台はアフリカで、クーグラー監督は制作の為に、アフリカの政治や歴史の専門家をコンサルタントに雇い入れ、
問題提起だけがマイノリティの映画ではない 本作は、アフリカ系アメリカ人による監督・脚本、キャストやスタッフもほとんどがアフリカ系という体制で制作されていますが、アフリカ系としてのアイデンティティを描く部分はあっても、声高に人種差別を告発する作品ではありません。良い白人も悪い白人も登場、アフリカ系の中での部族間の抗争や、思想信条を巡る対立も描かれており、宿敵もアフリカ系と、人種を対立関係の軸に持たない娯楽映画です。第89回アカデミー賞で8部門でノミネートされ、作品賞、助演男優賞、脚色賞を受賞したドラマ映画「ムーンライト」(2016年)も、本作同様、アフリカ系アメリカ人の監督・脚本で、キャストのほとんどがアフリカ系という作品です。舞台は監督自身が生まれ育った貧しく危険な地域ですが、アフリカ系アメリカ人の繊細な感性を描いた作品で、これも声高に差別や格差を告発する映画ではありません。 こうした作風を、解決すべき社会問題の安易に容認していると捉え、映画として物足りないと言う人もいます。実際、意地悪い目で見れば、こうした作品の背景にあるのは平等主義ではなく、実力主義であり、格差社会の是認であるということもできます。しかし、人種問題や格差問題を理屈ではなく感情の側面で捉えた場合、娯楽映画であれ、ドラマであれ、コメディであれ、肌の色や格差を超えて人間として共感することは、実は非常に重要なことではないかと思っています。「相違」は往々にして対立を生み出しますが、「共感」は協力に繋がります。声高に差別や格差を告発するか否かに関わらず、マイノリティを描いた映画がどんどん出てくれば、協力へ地盤が自ずから広がるでしょう。 世界的に受け入れられるアフリカ系の映画 アフリカ系アメリカ人を描いた映画は、日本ではなかなか受け入れられないと言われていますが、実はこれは日本に限ったことではありません。北米で高い評価を得ても北米以外では公開されないアフリカ映画や、公開されても全世界の興行収入に占める比率がせいぜいで数%、多くても20%止まりという作品がほとんどでした。「アベンジャーズ」シリーズなど非アフリカ系のメジャーなものだとこの比率は70%前後になりますので、アフリカ系の映画が如何に世界的に不人気だったかがわかります。そんな中で、本作の北米以外の興行収入の比率は50%近くに達しています。アメリカのみならず、欧州でも移民問題がクローズアップされるなど、人権に対する関心が高まった為でしょうか、実はアフリカ系アメリカ人を描いた映画も徐々に世界に受け入れられるようになってきているようです。 アフリカ系を描いた映画が世界的に受け入れられつつある
余談になりますが、日本は実質的な単一民族国家で、国民も価値観も均質的で多様性に乏しいと言われています。人種問題に関しても、欧米の価値観に迎合する必要がないという考えもあります。しかし、多様な人種、文化が共存するアメリカやヨーロッパは世界の縮図であり、欧米の人々は多様性の中で共存の危機と解決を肌身に感じながら生活しています。実質的単一民族国家で多様性に乏しい日本が、今後、多様化する世界の中でうまく立ち回っていく為には、むしろ意識的に異人種や多様性を受け入れていく必要があると思っていますので、こうした作品が受け入れられることは大歓迎です。 チャドウィック・ボーズマン(ティ・チャラ / ブラックパンサー) チャドウィック・ボーズマン(1976年〜)は、サウスカロライナ出身のアメリカの俳優、劇作家、脚本家。「ジェームス・ブラウン 最高の魂(ソウル)を持つ男」(2014年)、「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」(2016年)、「マーシャル 法廷を変えた男」(2017年)、「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」(2018年)などに出演している。 マイケル・B・ジョーダン(エリック・キルモンガー・スティーヴンス/ウンジャダカ) マイケル・B・ジョーダン(1987年〜)は、カリフォルニア出身のアメリカの俳優。「フルートベール駅で」(2013年)、「クリード チャンプを継ぐ男」(2015年)などのライアン・クーグラー監督作品で知られる。 ルピタ・ニョンゴ(ナキア) ルピタ・ニョンゴ(1983年〜)は、メキシコ生まれ、ケニア育ち、現在はアメリカを拠点に活躍する女優、映画及びMV監督。両親がケニア人で、英語、スペイン語、スワヒリ語、ルオ語に堪能。大学卒業後、「ナイロビの蜂」(2005年)、「その名にちなんで」(2006年)などに製作スタッフとして参加、その後、映画に出演するようになり、「それでも夜は明ける」(2013年)で、アカデミー助演女優を受賞する。「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」(2015年)、「奇跡のチェックメイト クイーン・オブ・カトゥエ」(2016年)、「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」(2017年)などに出演している。 ダナイ・グリラ(オコエ ) ダナイ・グリラ(1978年〜)は、アイオワ出身のアメリカの女優、劇作家。両親はジンバブエ出身。「扉をたたく人」(2007年)、「Mother of George」(2013年、日本未公開)、「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」(2018年)などに出演している。 マーティン・フリーマン(エヴェレット・ロス) マーティン・フリーマン(1971年〜 )は、イングランド出身の俳優。「ショーン・オブ・ザ・デッド」(2004年)、「ホット・ファズ —俺たちスーパーポリスメン!—」(2007年)、「ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!」(2013年)、「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」(2013年)、「ゴースト・ストーリーズ 英国幽霊奇談」(2017年)、「カーゴ」(2017年)などに出演している。少数の白人として本作に出演し、「白人映画に少数出演するアフリカ系俳優の気持ちが良くわかった」と語っている。 ダニエル・カルーヤ(ウカビ) ダニエル・カルーヤ(1989年〜)はイギリスの俳優、作家。十代から演技を始め、テレビドラマ・シリーズにに出演する傍ら、脚本も書き、舞台にも立つ。「ジョニー・イングリッシュ 気休めの報酬」(2011年)、「キック・アス/ジャスティス・フォーエバー」(2013年)、「ボーダーライン」(2015年)などに出演している。「ゲット・アウト」(2017年)でアカデミー主演男優賞にノミネートされ、一躍、世界的な知名度を得た。 レティーシャ・ライト(シュリ)レティーシャ・ライト(1993年〜)は、イギリスの女優。「My brother the Devil」(2012年、本邦未公開)、「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」(2018年)などに出演している。 ウィンストン・デューク(エムバク) ウィンストン・デューク(1986年〜)は、トリニダード・トバゴ出身のアメリカの俳優。「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」(2018年)などに出演している。 アンジェラ・バセット(ラモンダ) アンジェラ・バセット(1958年〜 )は、ニューヨーク出身のアメリカの女優。「ボーイズ'ン・ザ・フッド」(1991年)、「マルコムX」(1992年)、「TINA ティナ」(1993年)、「サンシャイン・ステイト」(2002年)、「ドリームズ・カム・トゥルー」(2006年)、「ザ・クリミナル 合衆国の陰謀」(2008年)、「シャイラク」(2015年)、「ミッション:インポッシブル/フォールアウト」(2018年)などに出演している。「TINA ティナ」で、アフリカ系アメリカ人女優として初めてゴールデングローブ主演女優賞 (ミュージカル・コメディ部門)を受賞。また、アカデミー主演女優賞にもノミネートされている。 フォレスト・ウィテカー(ズリ) フォレスト・ウィテカー(1961年〜)は、テキサス出身のアメリカ国の俳優。舞台とテレビドラマを経て1982年に映画デビュー、「プラトーン」(1986年)、「グッドモーニング、ベトナム」(1987年)「クライング・ゲーム」(1992年)、「スモーク」(1995年)などに出演、俳優としての評価を着実に高める。「ラストキング・オブ・スコットランド」(2006年)でウガンダの独裁者イディ・アミンを演じ、アフリカ系アメリカ人俳優としては史上4人目のアカデミー主演男優賞を受賞している。 アンディ・サーキス(ユリシーズ・クロウ) アンディ・サーキス(1964年〜)は、ロンドン出身のイギリスの俳優、モーションアクター、監督。当初は舞台美術の仕事に就くつもりであったが役者に転向し、舞台に出演するようになる。1989年からテレビに出演、1994年には映画デビュー。2000年代以降、ピーター・ジャクソン作品の常連となり、「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズ(2001年〜2003年)、「ホビット」シリーズ(2012〜2014年)ではモーションキャプチャでゴラムを、「キングコング」(2005年)ではコングと船内のコック、ランピーを演じている。他、「猿の惑星」シリーズをリブートした新三部作(2011年〜2017年)では、猿のリーダーであるシーザーを演じ、モーションアクターとして円熟のパフォーマンスを見せている。2011年に、特殊映像効果について学べるスタジオをロンドンに設立している。本作では、腕に装着される超音波砲の特殊映像効果を予め計算し、本物の腕がないように、飛び込んだり、落ちたり、身を投げ出したりアクションで、クーグラー監督を感動させた。 【サウンドトラック】
【撮影地(グーグルマップ)】
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Last updated
2018年08月10日 05時00分10秒
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