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「レディ・バード」(原題:Lady Bird)は、2017年公開のアメリカのコメディ&ドラマ映画です。グレタ・ガーウィグ監督・脚本、シアーシャ・ローナン、ローリー・メトカーフ、ルーカス・ヘッジズ、ティモシー・シャラメら出演で、カリフォルニアの片田舎のカトリック系の高校に通いながら、故郷を離れて東海岸の大学への進学を目指す17歳の少女の揺れ動く心情をコミカルに描いています。第90回アカデミー賞で作品、主演女優、助演女優、脚本、監督の5賞にノミネートされた作品です。
「レディ・バード」のDVD(楽天市場) 【スタッフ・キャスト】 監督:グレタ・ガーウィグ 脚本:グレタ・ガーウィグ 出演:シアーシャ・ローナン(クリスティン・"レディ・バード"・マクファーソン) ローリー・メトカーフ(マリオン・マクファーソン、クリスティンの母) トレイシー・レッツ(ラリー・マクファーソン、クリスティンの父) ルーカス・ヘッジズ(ダニー・オニール) ティモシー・シャラメ(カイル・シャイブル) ビーニー・フェルドスタイン(ジュリアン "ジュリー"・ステファンズ) スティーヴン・マッキンリー・ヘンダーソン(リバイアッチ神父) ロイス・スミス(シスター・サラ・ジョアン) オデイア・ラッシュ(ジェナ・ウォルトン) ジョーダン・ロドリゲス(ミゲル・マクファーソン、クリスティンの兄 ) マリエル・スコット(シェリー・ユハン) ジョン・カルナ(グレッグ・アンルー) ジェイク・マクドーマン(Mr.ブルーノ) ベイン・ギビー(キャシー・ケリー) ローラ・マラノ(ダイアナ・グリーンウェイ) マリエッタ・デプリマ(ミス・パティ) ダニエル・ゾヴァット(ヨナ・ルイス) クリステン・クローク(ミズ・ステファンズ、ジュリーの母親) アンディ・バックリー(マシュー) キャスリン・ニュートン(ダーリン・ベル) マイラ・ターリー(シスター・ジーナ) ボブ・スティーブンソン(ウォルター神父) ほか 【あらすじ】
【レビュー・解説】 つまらない故郷を飛び出して東海岸の大学に進学することを夢見る17歳の女子高生の姿を、母との対立を軸にカトリック系の高校生活、課外活動、親友との友情やボーイフレンドたちとの交際を織り込みながら、コミカルに生き生きと描いた、脚本、演出と多彩な才能を発揮し注目を集める女優グレタ・ガーウィグの単独監督デビュー作です。 故郷から離れた大学への進学を夢見る女子高生を母との対立を軸にコミカルに描く 優れた脚本、オスカー級俳優陣による極上のパフォーマンス UCLAを卒業しながら就職できない兄とうつ病で仕事が不安定な父を抱え、看護師をしながら必死に家計を支える母と、つまらない故郷の街を飛び出して新天地の大学に進学したい娘との諍いを軸に、娘の高校生活、課外活動、女友達との友情、ボーイフレンドたちとの交際などを織り込んだ完成度の高い脚本を、本作で三度目のオスカーにノミネートされたシアーシャ・ローナンが力強く個性的に演じています。才能溢れる彼女の強烈なパフォーマンスを受け止める両親役のローリー・メトカーフとトレイシー・レッツの老練な演技も見逃せません。特に、娘(女優のゾーイ・ペリー)を育てた自らの経験を活かしたというローリー・メトカーフのパフォーマンスは際立っており、シアーシャ・ローナンのアカデミー主演女優賞と並んで助演女優賞にノミネートされています。 成長株の俳優をしっかりと抑えたキャスティング 主人公のレディ・バードの親友役を演じるのが、ビニー・フェルドスタインです。彼女の兄は、アカデミー助演男優賞に二度ノミネートされている俳優・脚本家・声優・コメディアンのジョナ・ヒルで、兄同様、ぽっちゃり系の彼女は、コミカルで好感の持てるパフォーマンスで楽しませてくれます。また、レディ・バードのボーイフレンド役として、
レディ・バードの由来 自身の故郷であるサクラメントを称える作品を書きたいと思っていたグレタ・ガーウィグは、いくつかのシーンを書いたところで行き詰まってしまいます。そこですべてを脇に寄せ、頭に浮かんだ「何故、レディ・バードと呼んでくれないの?」という一言から、彼女のキャラクターを作り上げていきました。「レディ・バード」という名前には、「自由で可愛らしい大人の女性」と言ったニュアンスが感じられます。本作とは無関係ですが、第36代アメリカ合衆国大統領リンドン・ジョンソンの夫人が、クラウディア・「レディ・バード」・ジョンソンと呼ばれていました。グレタ・ガーウィグは、その意味をさして考えることなく、語感で「レディ・バード」という名前を選びましたが、優れた名作が往々にしてそうであるように、無意識とも言えるこの選択が本作に意味ある展開をもたらしています。 特に理由を意識することもなく、「レディ・バード」という名前を選びました。脚本に取り組み、いくつかの異なったシーンを書いたところで、行き詰まってしまいました。そこで、すべてを脇に寄せ、「なんで私をレディ・バードと呼んでくれないの?約束したじゃない?」と、ページの一番上に書いたのです。そして考えました、「この娘は一体誰?、自分をこの名前で呼ばせようにしている、この娘は誰?」と。今、振り返ってみれば、マザーグースのわらべ歌は知っていたし、宗教的にであれ、世俗的にであれ、改名すること意味についても、考えてはいました。(グレタ・ガーウィグ監督) 迷えるレディ・バード 上述のインタビューでグレタ・ガーウィグが、言及しているマザーグースのわらべ歌は、 "Ladybird, ladybird," BY MOTHER GOOSEのことです。レディ・バードはイギリスではてんとう虫の意味でも使われ、迷って自分の服に留まったてんとう虫を、子どもたちはこの歌を歌いながらフッと息をかけて吹き飛ばすそうです。 文字通りに家が火事になったわけではないのですが、UCLAを卒業しながら就職できない兄とうつ病で仕事が不安定な父を抱え、母が看護師をしながら懸命に家計を支えており、レディ・バードの家は経済的に大変な状況にあります。そんな家を顧みずに外の世界に憧れているレディ・バードに、マザーグースのてんとう虫が重なり、彼女が生まれ育った故郷を振り返ることができるかが、本作の大きなポイントになります。 レディ・バードの優越感と不安定感 レディ・バードは自らこのミドルネームを名付け、他の人にもそう呼ぶことを強いていますが、グレタ・ガーウィグはその背後に自分をより大きく見せたい気持ちと、自分自身に満足していない不安定感という、二重の意味があると言います。 カトリックの堅信では、聖人の名前を選び、自分の見習いたいこと、到達したい所を選びます。世俗的な例では、ロックスターや映画スターになりたい人が、デビッド・ボウイやマリリン・モンローなどの名前を選びます。これらは彼らの実名ではない、彼らより偉大な人々の名前です。私が面白いと思うのは、これが二重の意味を持つことです。これは自分がより大きな存在になれるという一種の優越感なのですが、その奥底には現在の自分に満足できていないという不安定感が横たわっているのです。(グレタ・ガーウィグ監督)18歳の誕生日を迎えるや否やタバコやポルノ雑誌を購入するレディ・バードには、故郷を離れて東海岸の大学に進学し「自由で可愛らしい大人の女性」になりたいという夢とともに、今在る自分に満足できない不安定さがあることを示唆しています。 レディ・バードが故郷を受け入れられない理由 多くのティーン・エイジャーは、故郷に退屈し、故郷を卑下し、都会の生活に憧れます。大人から見れば、彼らはうぬぼれており、傲慢にも見えますが、自分の出自を受け入れ、それを前提に自分の将来を考えることは、彼らには複雑過ぎるとグレタ・ガーウィグは言います。 故郷と取っ組み合いの喧嘩をすることができる、実際に離れるまで故郷の意味を理解できないというのは、そうしたティーン・エイジャーの優越感と不安定感によるものです。「今の私のままで大満足、私の生まれは素晴らしい」というティーン・エイジャーを、私はほとんど知りません。この年代は皆、自分は正しくない、自分がいる場所も正しくない、人生はどこか他の場所で始まると思い、実際に別の場所で生活してみようと考えます。そして実際に他の場所で実際に生活してみて初めて、人生はいつだって同じように続いていることに気がつくのです。(グレタ・ガーウィグ監督)レディ・バードのように母に喧嘩して走っている車から飛び降りてしまう少女はそれほど多くはないかもしれませんが、グレタ・ガーウィグはレディ・バードの一連の行動の背後にこうしたティーン・エイジャーに共通する成長のプロセスを想定することにより、その世代を通り過ぎた数多くの大人たちの共感を得ることに成功しています。 ヘイリー・スタインフェルドのレディ・バードも見てみたい シアーシャ・ローナンは贔屓の女優の一人です。1994年生まれの彼女は、「つぐない」(2007年)でアカデミー助演女優賞、「ブルックリン」(2015年)と本作で同主演女優賞と、若干24歳にして三度もオスカーにノミネートされている才気溢れる女優で、本作でも天下一品のなりきった感情表現を見せるなど、申し分のないパフォーマンスです。当初は無名の女優を主演に起用しようと考えていたグレタ・ガーウィグですが、勧められるままにシアーシャ・ローナンと旅先のホテルで脚本の読み合わせし、予想を上回る強情さとひょうきんさの感情表現に感動、わずか二分で彼女の起用を決めたといいます。自身が女優であるグレタ・ガーウィグは俳優によるキャラクターの解釈を重視する傾向があり、本作もシアーシャ・ローナンのカラーが強く出ています。 それはそれで全く不満はないのですが、グレタ・ガーウィグの作品として捉えた場合、どこかしらおおらかでソフトな部分を期待していしまいます。そういう意味では、「スウィート17モンスター」(2016年)でのパフォーマンスが記憶に新しいヘイリー・スタインフェルド(1996年生)のキャスティングでも見てみたいと思います。シアーシャ・ローナンよりもソフトで微笑ましいコメディになるような気がします。また、グレタ・ガーウィグの俳優によるキャラクターの解釈を重んじるという方針に従えば、クロエ・グレース・モレッツ(1997年生)、エル・ファニング(1998年生)などのキャスティングでも、そろぞれの味が出て面白いのではないかと思います。こうして様々な想像に思いを巡らせて楽しむこともできるもの、脚本がしっかりしているが故でしょう。 シアーシャ・ローナン(クリスティン・"レディ・バード"・マクファーソン) シアーシャ・ローナン(1994年〜)は、ニューヨーク出身のアイルランドの女優。両親は共にアイルランド人で、父は俳優。ニューヨークで生まれ、3歳の時に両親と共にアイルランドに移住。9歳で子役のキャリアを初め、アイルランドのテレビシリーズなどに出演する。13歳の時に「つぐない」(2007年)でアカデミー賞主演女優賞にノミネートされ、一躍、注目を浴びる。その後も、「ラブリーボーン」(2009年)、「ウェイバック -脱出6500km-」(2010年)、「ハンナ」(2011年)、「グランド・ブダペスト・ホテル」(2014年)などのヒット作で着実にキェリアを重ね、「ブルックリン」(2015年)及び本作で、アカデミー賞主演女優賞にノミネートされている。 ローリー・メトカーフ(マリオン・マクファーソン、クリスティンの母) ローリー・メトカーフ(1955年〜)は、イリノイ州出身のアメリカの女優。テレビドラマでエミー賞を3度受賞している。「JFK」(1991年)、「リービング・ラスベガス」(1995年)、「スクリーム2」(1997年)などに出演する一方で、「トイ・ストーリー」シリーズなどのアニメで声優としても活躍している。女優のゾーイ・ペリーが娘で、娘を育てた経験が本作の役作りに生きたと語っている。 トレイシー・レッツ(ラリー・マクファーソン、クリスティンの父) トレイシー・レッツ(1965年〜)はアメリカの俳優、劇作家、脚本家。 舞台劇「8月の家族たち」(2008年)の脚本でピューリッツァー賞の戯曲部門を受賞、舞台劇「ヴァージニア・ウルフなんかこわくない」の再演(2013年)に出演し、トニー賞を受賞している。「マネー・ショート 華麗なる大逆転」(2015年)、「Indignation」(2016年、「アンダーカバー」(2016年)、「Christine」(2016年)、「ラバーズ・アゲイン」(2017年)、「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」(2018年)など、映画にも数多く出演している。 ルーカス・ヘッジズ(ダニー・オニール) ルーカス・ヘッジズ(1996年〜)は、ニューヨーク、ブルックリン出身のアメリカの俳優。母は詩人・女優のスーザン・ブルース、父は脚本家・監督のピーター・ヘッジス。中学の時に演じた演劇が「ムーンライズ・キングダム」(2012年)のキャスティング・ディレクターの目にとまり、出演する。以降、「グランド・ブダペスト・ホテル」(2014年)、「マンチェスター・バイ・ザ・シー」(2016年)、「スリー・ビルボード」(2017年)、「ある少年の告白」(2018年)、「ベン・イズ・バック」(2018年)と並み居る名作に出演、「マンチェスター・バイ・ザ・シー」では助演男優賞にノミネートされている。 ティモシー・シャラメ(カイル・シャイブル) ティモシー・シャラメ(1995年〜)は、ニューヨーク出身のアメリカの俳優。父はフランス人、母は元ブロードウェイ・ダンサーで、フランスとアメリカ双方の国籍を有する。フランス在住の姉も俳優。幼少の頃から一年の1/3以上をフランスで過ごし、フランス語に堪能。幼少の頃からコマーシャルに出演、2008年に短編映画、2009年にテレビ映画にデビュー。「君の名前で僕を呼んで」(2017年)の主演に抜擢され、第90回アカデミー主演男優賞にノミネートされている。 ビーニー・フェルドスタイン(ジュリアン ・"ジュリー"・ステファンズ) ビーニー・フェルドスタイン(1993年〜)は、アメリカの女優。2002年にテレビのコメディ・ドラマ・シリーズでデビュー。アカデミー助演男優賞に二度ノミネートされている俳優・脚本家・声優・コメディアンのジョナ・ヒルは、実の兄。兄同様、ぽっちゃり系の彼女は、インタビューの印象もコミカルで嫌味がなく、今後の活躍が大いに期待される。 【撮影地(グーグルマップ)】
【関連作品】 グレタ・ガーウィグ脚本・出演作品のDVD(楽天市場) 「フランシス・ハ」(2012年)出演・脚本 「EDEN/エデン」(2014年) 「ミストレス・アメリカ」(2015年)出演・脚本 「マギーズ・プラン 幸せのあとしまつ」(2015年) 「ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命」(2016年) 「20センチュリー・ウーマン」(2016年) シアーシャ・ローナンxルーカス・ヘッジズ共演作品のDVD(楽天市場) 「グランド・ブダペスト・ホテル」(2014年) シアーシャ・ローナン出演作品のDVD(楽天市場) 「つぐない」(2007年) 「ウェイバック -脱出6500km-」(2010年) 「ブルックリン」(2015年) 「ゴッホ 最期の手紙」(2017年) ローリー・メトカーフ出演作品のDVD(楽天市場) 「JFK」(1991年) 「リービング・ラスベガス」(1995年) 「スクリーム2」(1992年) トレイシー・レッツ出演作品のDVD(楽天市場) 「マネー・ショート 華麗なる大逆転」(2015年) 「Indignation」(2016年)輸入盤、日本語なし 「アンダーカバー」(2016年) 「Christine」(2016年) 「ラバーズ・アゲイン」(2017年) 「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」(2018年) ルーカス・ヘッジズ(出演作品のDVD(楽天市場) 「ムーンライズ・キングダム」(2012年) 「マンチェスター・バイ・ザ・シー」(2016年) 「スリー・ビルボード」(2017年) 「ある少年の告白」(2018年) 「ベン・イズ・バック」(2018年) ティモシー・シャラメ出演作品のDVD(楽天市場) 「君の名前で僕を呼んで」(2017年) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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2019年03月08日 05時00分08秒
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