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カテゴリ:映画
「恋する惑星」(原題:重慶森林、英題:Chungking Express)は、1994年公開の香港のサスペンス/ファンタジー&ロマンティック・コメディ映画です。ウォン・カーウァイ監督、トニー・レオン、フェイ・ウォン、金城武ら出演で、香港の九龍、尖沙咀にある雑居ビル・重慶大厦の周辺を舞台に、二人の警官の失恋とすれ違う恋愛模様をオムニバス形式でスタイリッシュに描いています。
「恋する惑星」のDVD(楽天市場) 【スタッフ・キャスト】 監督:ウォン・カーウァイ 脚本:ウォン・カーウァイ 撮影:アンドリュー・ラウ(ラウ・ワイキョン)(前半) クリストファー・ドイル(後半) 出演:トニー・レオン(警官663号) フェイ・ウォン(フェイ) ブリジット・リン(謎の金髪女) 金城武(警官223号) チャウ・カーリン(スチュワーデス) ほか 【あらすじ】
【レビュー・解説】 国際都市の香港を象徴する卓越した映像と音楽、熟成されたキャラクターとナチュラルな演技で描くスタイリッシュなロマンティック・コメディが、今観る人に爛熟期の香港映画の確かな力と時の移ろいを感じさせます。 オムニバス形式のスタイリッシュなロマンティック・コメディ 香港の重慶マンション周辺が舞台に二人の警官の失恋とすれ違う恋愛模様を、かたやクライム・サスペンス風に、かたやファンタジー風に描いた、オムニバス形式のスタイリッシュなロマンティック・コメディです。かのクエンティン・タランティーノ監督が絶賛したという作品で、公開時期もタランティーノ監督のデビューと前後してます。 1992年「レザボア・ドッグス」(クエンティン・タランティーノ監督・脚本) 1993年「トゥルー・ロマンス」(クエンティン・タランティーノ脚本) 1994年「パルプ・フィクション」(クエンティン・タランティーノ監督・脚本) 「恋する惑星」(ウォン・カーウァイ監督)・・・本作 香港が舞台のスタイリッシュなロマンティック・コメディ タランティーノ監督作品に比べると甘くソフトですが、当時の世界の最先端のトレンドと肩を並べる本作は、1997年の中国への返還を前にした爛熟期の香港映画の底力を見せる作品と言えます。 国際都市の香港を象徴する卓越した映像と音楽 前半にアンドリュー・ラウ(ラウ・ワイキョン)、後半にクリストファー・ドイルと、本作では二人の撮影監督を起用していますが、いずれも色彩感豊かで動きのある現代的な映像がとても心地よく、時代を感じさせません。 アンドリュー・ラウ(ラウ・ワイキョン)撮影監督のポップな映像 クリストファー・ドイル撮影監督のファンタスティックな映像 作中、ビルをかすめるように旅客機が香港の上空を飛ぶシーンがあります。これは山を避け、香港の市街地上で大きくターンしながら着陸するという、世界的な有名な香港の啓徳空港特有の着陸ルート(香港アプローチ)によるものです。このビルをかすめるような旅客機の飛行シーンは、混沌とした国際的な大都市である香港を象徴するだけではなく、旅客機や模型、客室乗務員が頻繁に登場する本作のテーマへと広がりを持っています。映画製作当時の香港市民には返還後の中国政府の統治を懸念し、カナダやオーストラリなど海外への移住を考える人もいました。本作にはママス&パパスの「夢のカリフォルニア」という挿入歌とともにカリフォルニアに旅立つというエピソードが挿入されていますが、それは当時の世相をさりげなく反映したものでもあり、そうした社会的な不安を背景にしながらも将来に希望を感じさせる作品になっています。 その他の挿入歌も欧米文化の影響の強かった香港を反映しており、
などのアメリカン・ポップスが効果的に使用されています。 爛熟期の香港映画の確かな力と時の移ろいを感じさせる 因みに、本作の後半部の主演を務め、クランベリーズの「Dreams」の中国語カヴァーである「夢中人」を歌っているフェイ・ウォンは北京出身で、世界的な歌手を目指して香港に移住、アメリカ留学の経験もあります。たまたま最近観た中国映画「迫り来る嵐」(2017年)に香港が返還される前後の中国が描かれていますが、当時の社会主義下の中国人にとって香港は遥か遠い場所にある、高度な資本主義と物質主義に満たされた別世界でした。そんな別世界が中国に返還されることは彼らの大きな関心事で、「いつか香港に遊びに行く」というのが当時の中国人の夢でした。実際に香港に渡ったフェイ・ウォンは、大変な勇気と野心の持ち主だったと言えます。 カンフー映画で勢いづき、アクシャン映画やコメディ映画で我が世の春を謳歌した香港映画ですが、1997年の中国への返還を機に中国政府の検閲に萎縮、さらに同年のアジア通貨危機が追い打ちをかける形で衰退していきます。返還後も、
などの良作が公開されますが、香港映画の衰退を隠すことはできず、「雨傘運動」などの社会的なムーブメントも映画の題材になりにくい状況が続いています。香港と中国の経済的な立場は、いつの間にかすっかりと入れ替わってしまいました。1998年、香港市街地から20キロほど離れた人工島に新たに香港国際空港が建設されました。役目を追えた啓徳空港は閉港となり、あの有名な「香港アプローチ」も観ることができなくなりました。そうした時代背景の中、香港映画の爛熟期を感じさせる本作に、失恋の味にも似た何か甘酸っぱいものを感じてしまいます。 トニー・レオン(警官663号) トニー・レオン(1962年〜)は、香港の俳優、歌手。母語の広東語の他、北京語、英語を話す。俳優養成所時代から容貌と演技力を買われ、一年先輩のアンディ・ラウと並んでテレビスターとして一世を風靡する。1983年頃より映画界に転身、「花様年華」(2000年)で香港人として初めてカンヌ国際映画祭で男優賞を受賞し、国際的にも高い評価を得る。「インファナル・アフェア」(2002年)、「HERO」(2002年)、「2046」(2004年)、「レッドクリフ」(2008年)などに出演している。 フェイ・ウォン(フェイ) フェイ・ウォンは、中国出身の香港の歌手、女優。高校で歌を始め、北京でカセットテープを発売する。高校を卒業後香港へ移住、1989年に歌手デビュー、1991年から1992年までの約半年間アメリカに留学する。1992年香港に戻り、アルバムを制作、発表、中島みゆき作詞・作曲、ちあきなおみ歌の「ルージュ」のカヴァーが爆発的にヒット、香港の音楽賞を総なめにする。日本ではプレイステーション用ゲームソフト「ファイナルファンタジーVIII」の主題歌「Eyes On Me」や、フジテレビ系のテレビドラマ「ウソコイ」に主演し主題歌「Separate Ways」を歌っている。映画は本作の他に「2046」(2004年)などに出演している。 ブリジット・リン(謎の金髪女) ブリジット・リン( 1954年)は、台湾出身の女優。1972年にスカウトされ、翌年に映画デビュー、台湾屈指の青春映画スターになる。男装の麗人を演じることを得意とする。本作出演後、結婚を機に女優業を引退し、現在は執筆活動に重点を置いている。 金城武(警官223号) 金城 武(1973年)は、台北出身の台湾の俳優。日本人の父と台湾人の母との間に生まれ、沖縄県出身の祖父を持つ。日本語、北京語、広東語、台湾語、英語に堪能。中学までは日本人学校に通い、高校からはアメリカンスクールに通う。高校時代にスカウトされCMに出演、卒業後に歌手デビュー、アイドルとなり、台湾四小天王と呼ばれた。1993年に映画デビュー、 「LOVERS」(2004年)などに出演している。日本、中国、香港、台湾など東アジア地域で、映画、ドラマ、CM出演と、活動範囲が広い。 チャウ・カーリン(スチュワーデス) チャウ・カーリン(1970年〜)は、香港の元女優、1991年ミス香港準優勝、レブロンと契約した最初の中国人モデル、ファッション・ジャーナリスト、起業家。本作を含め数多くの映画、テレビ番組に出演するが、2003年以降はファッション・ジャーナリストと活動し、2010年に香港に子供向けデザイナーズ・ブランドのコンセプト・ストアを立ち上げる。2018年、映画「Prison Architect」で女優に復帰する。 【サウンドトラック】 「恋する惑星」のサウンドトラックCD
【動画クリップ】
【撮影地】
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Last updated
2020年04月05日 05時00分06秒
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