ヒッチハイク&キャンプの北海道中膝栗毛 (15)
今日、勝てば阪神は優勝だそうです。もう、そんな時期なのですねえ。 では、今日も昨日の続きから。富良野での初めてのキャンプ。でも、なかなか眠れません。そんな状況下で、私が見たものは・・・。ヒッチハイク&キャンプの北海道中膝栗毛 徒歩田 一 眠れないついでに外の様子を見ようと、寝袋に包まったまま仰向けの状態で首だけをテントの外へ出した。さすがに起きている人はいないようで、ランタンの灯はどこにも見当たらず、辺りはシーンと静まっていた。何気なく右の方を見たとき、十五メートル位離れた所にキタキツネを見つけた。そして、以前、稚内を旅した時に地元の人が言っていた事を思い出した。「キタキツネには絶対さわって駄目です。エキノコックスという寄生虫に感染する危険があるんです。餌をあげる時は地面に置いてあげて下さい。」観光客に人気のキタキツネであるが、不用意に近づくと大変な目に遭ってしまうようである。今、私の視界に居るキタキツネはキャンパーが自身のテント近くに置いたゴミをあさっていた。「ゴミは溜め込まないで、その都度捨てなきゃ駄目だろ。」などと、思いながらその様子を見ていた。それと同時に、私はずっと寝袋に包まって身動きの取れない状態にあった為、「キツネ!こっちに来るなよ。向こう行け。」と、祈るように心の中で言っていた。みんなが可愛いと言っているキタキツネも、このような状態の時には、少し怖く感じてしまうのであった。しばらく、そのゴミをあさっていたキタキツネも、そのうち夜の闇へ消えて行き、私もテントの中へ引っ込みその後、朝まで浅い眠りを繰り返すこととなった。 意識が遠のくのか、遠のかないのか、まともに眠れないまま、辺りが明るくなっていたことに気付いた。「やっと朝か。」ようやく苦痛な夜から開放された。テントから出て外気に触れてみる。「寒い!八月だというのに寒いなんてことがあるのか。」すぐに私は自動販売機へ行きホットコーヒーを買った。「この温かさが嬉しい。でも、これが夏に感じる感覚とは信じられない。」実はこの北海道、列車の車内販売でも八月であるというのにホットコーヒーが売れていた。初キャンプから自分の普段の住所との気候のあまりの違いに、かなり驚かされてしまった。 近くの山には朝もやがかかり、ヒンヤリとしたさわやかな森の朝を演出していた。何はともあれ、初キャンプで無事に朝を迎えることができたのだ。前日に買っておいたパンで、森での朝食を済ませる。 炊事場での歯みがき洗顔は、ヒヤッとした水と空気の澄み具合が気持ち良かった。時間に追われる事もなく、朝の爽快さを感じながら、のんびりと身支度をした。日常では朝と言えば、慌ただしくて一番余裕のない時である。「朝が爽快だなんて感じたこと、ほとんど無かったなあ。」 私は昨日、苦労して登ったリフトの頂上地点へ行ってみた。目の前に広がる展望は、しばらく見ていても飽きることがない。眼下のこの町を朝陽が明るく照らしている。北海道、上陸二日目の新しい一日が始まったところである。 今日はここまで。