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行きかふ人も又

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2006.06.17
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  1961年刊行以来のベストセラー。評する言葉もないほどの感動―と絶賛された。
精神科医フランクルが、ドイツ強制収容所で体験したことの記録は、アウシュヴィッツの悲劇と悲惨を伝え人間の偉大と悲惨を静かに描き出す。



  この本で語られた実話は、全く知らないでいたことばかりでした。
そもそもわたしの知識といえば、映画や少しのドキュメンタリーで知りえたことだけで、ホロコーストに関する書籍を読むのも今回が初めてでした。
発疹チブスの猛威、粗末過ぎる食事、生きる気力を無くした者が自らそれを止る...
ガスかまどと銃殺が幾万の命を奪ったことは知っていても、こうして他の理由で死んでいった者も驚くほど多かったことは、驚愕の思いでした。

本当に人間にできることなんだろうか...人が耐ええたことなんだろうか...
痛んでくる内臓を抱えて、ただ読み進めるので精一杯です。

精神科医である著者が洞察した、収容所内で繰り広げられた出来事が人に与えたショックと影響。
どれもそうだったのかと動揺しながら、納得することばかりでした。
アウシュビッツへ連れてこられる以前に、どんなに強靭な肉体を持った人でも、生きる意味と希望を得られない環境では、折れて負けてしまう。
そのかわり、精神を強く保っていけた者は、生き延びることができた。
生きて帰った著者が、どんなモチベーションで想像を絶する環境から帰還することができたのかを語るあたりは圧巻でした。

監督する側にも善良な者はいて、囚人にも悪意に満ちた者がいた。
いかなるグループも「純血」ではない...
この言葉はドキッとさせられました。
こういった部分が、映画や物語にされてくことも多いのでしょうね。


フランクル氏の書いた本文へ向う前に、かなり長い解説があります。
それは、ドイツで起こった組織的集団虐殺の実態を詳しく述べたもので、ここを読むことによって、本文がなお更理解しやすいものになります。
そして巻末には、当時の生々しい写真も収められています。

表紙の中村光夫氏評では「…不思議な明るさを持ち、読後感はむしろさわやか」とありましたが、実際私自身はさわやかにはなれませんでした。
ただ、これだけおぞましいことをやってのけた人間のどす黒い部分はさておき、生と死の狭間に置かれてなお、精神の自由と清らかさを保つことができたのも人間だということに対しては、わずかでも希望を抱かずにいれませんね。
そして人生にはユーモアが必要だと。








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Last updated  2007.01.22 15:00:36
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