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2006.07.20
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カテゴリ:日本映画

  麻酔を拒否して手術を受ける伯爵夫人と、若き執刀医との隠された思慕の念を、医師の親友である画家の回想として描く。泉鏡花の同名小説の映画化。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 今まさに手術が始まろうとしている外科室。患者の伯爵夫人はかたくなに麻酔をかぐことを拒みます。

「麻酔でうわごとを言うのが怖い。私には誰にも聞かれたくない秘密がある・・・・」

何を言われようとも拒み続ける患者に、若き医師は麻酔なしでの手術を受け入れます。彼を信じ意識あるままメスを入れられた伯爵夫人と、オペを執刀する若き医者。
ふたりは密かに9年もの歳月、深い思慕で結ばれてきたのでした――

たった一度すれ違い見つめ合っただけで、9年間愛する。これこそロマンチシズム
作品の中では多くを語らず、甘美な雰囲気だけをいっぱいに詰め込んでいます。
原作でも、出逢った時すでに伯爵夫人だったのでしょうか。あらすじをさっと見たところでは、実際は青年と少女の時分に出逢い、外科室で再会を遂げる――そんな物語のよう。

映画では当時29歳の加藤雅也(青年)と、47歳の吉永小百合(伯爵夫人)が、一目で恋に落ちます。原作のある作品を映像化するとき、なかなか上手くいかない理由のひとつには、作り手のイメージと観る側が思い描いたイメージが違うから。
この作品で、監督の坂東氏が描いた甘美な世界は、私が観たいものとはすこし違っていました。
出逢った場所であるつつじ庭園の美しさや淡い色づかい、外科室でのやりとりと、そこでの吉永小百合の演技はとても好きでした。

きっと加藤氏は美青年で誠実そうな外見で選ばれ、日本美人のトップ吉永さんがヒロインとなったでしょう。
けれど、自分が観たい二人はちょっと違うし、年の差があまりにも顕著で、一瞬にして長年の思慕に至る場面に、ハッとできなかったのでした。

あまりに純粋で切なく清らかな物語。原作が気になる。泉鏡花の世界に初めてほんの少しでも触れることができて、原作を手に取るきっかけになりそうな予感。 


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監督  坂東玉三郎
製作  小田久栄門 、奥山和由 、荒戸源次郎
原作  泉鏡花
脚本  橋本裕志 、吉村元希 、坂東玉三郎
音楽  ヨーヨー・マ 、エマニュエル・アックス
出演  吉永小百合 、加藤雅也 、鰐淵晴子
     





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Last updated  2011.11.18 22:31:37
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