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行きかふ人も又

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2006.11.10
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  小説を読んで久しぶりに溜息がでるほどの感慨のなかにいます。
今の自分が知りたいこと、今の自分が求めてるもの、それがほとんど集約されてあるような物語でした。
深層意識への道 グーテンベルクの森」で知った本で、クリスチャンだった遠藤周作の宗教観が、何もわからないなりにすごく身近でした。
ぼんやりと抱き続けてきた思いや疑問は、登場人物・大津の生き方が答えでもあるようで・・・短い本なのにすごく深く、インドの匂いまで感じるようです。 



 愛を求めて、人生の意味を求めてインドへと向かう人々。自らの生きてきた時間をふり仰ぎ、母なる河ガンジスのほとりにたたずむとき、大いなる水の流れは人間たちを次の世に運ぶように包みこむ。人と人のふれ合いの声を力強い沈黙で受けとめ河は流れる。 



  癌で死んだ妻の生まれかわりをインドで探す磯辺、人生に冷めている美津子、童話作家の沼田、戦時中ビルマのジャングルで戦った木口――
それぞれの理由と目的を抱いて、インドツアーに参加した人々の物語です。
仏教の誕生した国でありながら、今ではヒンズー教徒がほとんどを占めるカースト制度の残る国。舞台はなぜインドなのでしょう。
それは読むとすぐに分かりました。
死を連想させる国の大河で、彼らが感じたこと見たものは、まさにインドでなければならないこと、来るべきして来たんだと。

TVや本で見るガンジス河の濁った流れが、読んでいる間中ずっとちらついて、きっといつか自分も行きたくなるような気がしました。
この本を読んだだけでインドが大嫌いになる人もいるのかもしれません。
でも私にはさらに惹かれる国になりました。


どの人物もおざなりになることなく描かれる中、美津子の周囲に登場して誰よりも印象に残ったのが大津という男でした。
カトリックの家に生まれ、敬虔なクリスチャンで真面目で人の良すぎる大津は、大学時代に美津子に誘惑され棄てられた過去があります。
あまりに情けなく描かれる大津は、東洋的な観念を西洋ではねつけられ、いつまでも神父になれず、最後にやっと辿り着くのがインドの修道院なのです。
道端でのたれ死んでいく者を担いで、川辺にある火葬場へ運ぶ毎日。
やっと神父になれても、それを隠して河へ通います。
大津に会うためにはるばるインドまで来た美津子には、最後までその不器用な生き方は理解できません。
ただ彼が信じ続けた‘神'についてはやっと理解できるのでした――



宗教のことは、私には難しくてわかりません。
ただ宗教が戦争を生んでしまうのはとても悲しい。
大津が求めた神は、どんな宗教にも存在している神でした。
どこにでもいて、どの宗教の中にもいて、まるで輪廻していくように人々の心に宿っているもの。
‘玉ねぎ’と呼んだっていいと言いました。
彼のように生きる人がいたら、それは本当にすごいと思います。
どの宗教がいいとかではなく、彼の辿り着いた考えをみんなが持つことができたら、きっと争い事は減るのではないでしょうか。
知りもしないでハチャメチャに書いてしまいましたが...そう感じました。


輪廻転生のこと、インドという国の魅力。
私がいま知りたいことが次々物語に登場して、夢中で読み進めました。
河合隼雄さんおすすめなだけあって、氏の物事の捉え方と共通したところが多かった気がします。
心のもっと奥に魂というものがあるとして、そこに響いてくるような、そんなずっと大切にしたい本になりました。


深い河









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Last updated  2007.01.22 14:56:29
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