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行きかふ人も又

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2006.12.17
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テーマ:本日の1冊(3697)
カテゴリ:


  兄は泉水、二つ下の弟は春、優しい父、美しい母。家族には、過去に辛い出来事があった。その記憶を抱えて兄弟が大人になった頃、事件は始まる。連続放火と、火事を予見するような謎のグラフィティアートの出現。そしてそのグラフィティアートと遺伝子のルールの奇妙なリンク。謎解きに乗り出した兄が遂に直面する圧倒的な真実とは―。 



  伊坂幸太郎。この方の本を読むのも初めてです。
「アヒルと鴨のコインロッカー」「陽気なギャングが地球を回す」「チルドレン」若い作家さんながら、これだけの作品が映画化されているのは、物語の面白さの表れなのかもしれませんね。
「重力ピエロ」を読んだら、映画化された作品群が観たくなりました。原作を読んでから。


サスペンスでありながら、家族の愛を描いた素晴らしい一冊でした。
変わり者の登場人物たちは、家族をはじめ、気取らず格好つけず、すぐにでも好きになってしまうような人たちばかり。
冒頭から好みだと感じました。


作者はそうとうな映画好きなはずで、台詞の引用やゴダール・トーク、黒澤という探偵まで登場します。
強姦された母が身ごもって生まれた弟の春は、ガンジーを愛し、ジョルジュ・バタイユを憎んで大人になります。
それでも物語の語り部である兄も家族も、過去の事件に押し潰されそうになりながら、彼を心から愛して幸せに暮らしてきました。
底知れない愛を感じた家族の場面では、泣けてきました。


強姦魔の子どもであるがゆえに、徹底的に‘性的なもの’を憎む春の態度は辛く痛く重苦しいはずなのに、ウイットにとんだ軽快な文体がよく似合う。
60近くある、それぞれが巧妙でユニークな章のタイトルは、次々に気分を一掃させながら、次章への興味を引いていきます。
事件の謎が読めてきた後も、さらに大きな謎の紐が解かれていく、伏線もいい味出してます。

言葉遊びが巧い!
ラストの一言が最高にシュールです。
この作家さんのような視点で、人生のあらゆる物事を見ていけたら、きっと幸せになれる気がする。
格好良い主人公たちなのに、この気取らない魅力は、かなり心をくすぐりました。








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Last updated  2007.05.28 10:50:31
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