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カテゴリ:日本映画
セックスレスの夫婦りん子と重彦は、突如介入してきたストーカーの脅迫をきっかけに、精神も肉体も崩壊していく。解放されたのちに新たに芽生える関係とは・・・。 2002年のベネチア国際映画祭のコントロコレンテ部門で審査員特別大賞を受賞。 最近、映画選びの参考にしている「死ぬまでに観たい映画1001本」ですが、そこで作品が選ばれている日本人監督たちは、新藤兼人、勅使河原宏、市川崑、伊丹十三、溝口健二、小津安二郎、大島渚、黒澤明、三池崇史、今村昌平という名匠ぞろいです。 その中に、この塚本晋也の名前があることは、、一ファンとして、驚きでもあり嬉しくもありました。 選出作品は初期の頃の「鉄男」。 強烈なインパクトのある作品でしたが、この「六月の蛇」を観て、研ぎ澄まされた塚本ワールドがさらに好きになりました。 今まで観て来たものと同じく、こちらもエロティックで気持ち悪いし、煮えたぎったお湯が至るところで蒸気を噴出してるような作品です。 強烈でおぞましいかもしれないけど、人間は本来こういうものではないかと思えて、妙に安心したりします。 映画で描かれる人間をたくさん目にしてきましたが、塚本作品に登場するぞっとするような人々が、なぜか気になって気持ちから離れないのは、ある種の親近感からなのかもしれません。 人の内面にあるものはどの国も同じ、だからこそ海外でも認められる監督となったのかもしれませんね。 苛立ち、焦燥の淵に立たされる主人公たちは、みな玉のような酷い汗をかいています。 時は6月、梅雨の季節。 陰鬱な雨は降り止むことをしりません。 ある日、電話相談窓口で働く平凡な主婦のりん子は、自殺予告してきた男の自殺を思い留まらせますが・・・ しかし翌日から、彼女の自慰行為を盗撮した写真で男に脅されるようになるのです。 ‘性的なこと’も、人にはすごく大きなテーマであると思ってます。 この映画の場合、男・道郎から要求されるのはあからさまに恥辱に満ちたこと。 いかがわしい感もたっぷりですが、その果てにあるものは、なかなか感じることができないような開放感であり、純愛なのでした。 りん子が抑圧してきた欲求を満たす終盤へと、見事に繋がっていきます。 潔癖症で歳の離れた夫・重彦にとっては、欠けていた欲望を取り戻すきっかけとなる、ストーカー男との出会い。 皆が病んでいます、心ばかりでなく体も。 癌に蝕まれた道郎とりん子と、潔癖症の夫と。 だけど死の恐怖とか、性的な欲求とか、配偶者への不満とか、愛する気持ちなんかを、すべて開放できたとき、それはひどく潔いものにも見えてしまうから驚きです。 じめじめとした六月の雨のなか、繰り広げられるこのドラマは強烈な愛の物語でした。 徹底して醜いものと美しいものを、ひとつの作品に並べて使う印象の塚本作品。 これからもずっと観続けていきたい監督のひとりです。 監督・製作・脚本・撮影監督・編集 塚本晋也 撮影 志田貴之 音楽 石川忠 出演 黒沢あすか 、神足裕司 、塚本晋也 寺島進 、田口トモロヲ 、鈴木卓爾 モノクロ(ブルートーン)/77分 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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