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テーマ:■ムービー所感■(484)
カテゴリ:日本映画
九州の田舎町で起こったバスジャック事件に遭遇し、生き残った運転手の沢井(役所広司)と中学生・直樹(宮崎将)と小学生・梢(宮崎あおい)の兄妹。3人は乗客が次々と射殺された凄惨な現場を体験し心に深い傷を負ってしまう。2年後、事件直後、妻を置いて消息を絶っていた沢井は再びこの町に戻ってきて、やがて兄妹の家で奇妙な共同生活を始めるが・・・。 心に深い傷を負った人々の、崩壊と癒しそして再生への旅をゆったりとした時間の流れで真摯に見据えたドラマ。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 217分というかなりの長編ながら、じっくりと飽きさせずに、癒しと再生の情景が描かれていました。 セピアトーンで抑揚のない、淡々とした作品。 観るうちに、傷ついた三人の思の大きさがじわじわ伝わってきて、そうしなければにっちもさっちもいかなかった彼らの心の傷に、大きな溜め息が出る――そんな気持ち。 直樹と梢の兄妹は、事件後に母親が出て行き父親は事故死して、ふたりぼっちになってしまいます。 事件のショックで口をきかなくなったふたりが巻き起こす、生活の中の乱れた空気は、家族を失ってもなお、終わらず続いていきます。 そこへ突然現れたのが沢井で、学校へも行かずに暮らしていたふたりの面倒をみるうち、自然と共同生活がスタートするのです。 生易しいものではない彼らの心的外傷。 ひとりは負けてしまい殺人を犯し始め、ひとりは静かに苦しみ、ひとりは自然体で乗り越えようとする。。 それでも微妙に支えあいながら立ち向かっていく三人。 そこに加わる異質なものとして、兄妹のいとこ・秋彦(斉藤陽一郎)が加わり、物語は悲しさと希望で幕を下ろすのでした。 みんなにとって、特に沢井にとって、梢は唯一の希望だったのかもしれません。 彼女が立ち直ることができれば、もうそれで何もかもが解決してしまうような…それくらい梢に懸けている思いを感じました。 兄・将が苦しみに負けて、誤った道へ進み始めたとき、それを止められる人はもうほんとに沢井しかいなかったのだろうとも思います。 彼らに混じって行動しながらも異質だった秋彦が、最後には思い切り見当違いの言葉を吐いて沢井に捨てられてしまうシーンにガツンときました。 「害虫」でも書きましたが宮崎あおいの、表情でする演技に釘付け。 ほんとの兄妹で出演した宮崎兄と妹は、話さないけれどじっくりしっかり、パンクしそうな感情を演じています。 音楽も脚本も担当した青山真治監督、すごい人です。 セピアのモノトーンで綴られて、最後にいっきに色が蘇るあたりも好感持てました。 重たい作品なので、時間のあるときにじっくり鑑賞するのが良いかもしれません。 人の再生って、こんなふうに行われていくんだというリアルさもあります。 トラウマとなったバスにまた乗り込む三人を見ながら、よくわからないけれど、この治しかたを選んだのだと、妙に納得してしまえたのも良かったです。 監督・脚本・編集・音楽 青山真治 製作 塩原徹 、長瀬文男 、仙頭武則 、滝島優行 出演 役所広司 、宮崎あおい 、宮崎将 斉藤陽一郎 、国生さゆり 、光石研 (モノクロ(セピア)/217分) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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