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テーマ:■ムービー所感■(484)
カテゴリ:日本映画
戦国の世、貧しい妻子ある陶工の源十郎は、商いの折に若狭姫という女性と知り合い、生活をともにするようになる。だが美しい若狭姫の正体は死霊であった。それを知った源十郎は故郷に逃げるが……。 雨月物語の「浅茅が宿」と「蛇性の婬」を脚色。ベネチア国際映画祭銀獅子賞受賞作品。 雨月物語は先日観た「御法度」でも本編中に登場していました。 あれから少し気になって、この映画を観たら更に気になって、読んでみたいと、とうとう古書で購入しました。江戸時代の怪奇小説。 海外の怪奇物にはない、日本独特の怪談の妖しげな怖さは、やはり性に合う感じで、こちらの映画もとても楽しめました。 貧しくても家族3人、焼物をして暮らしてきた源十郎一家。 城下市で捌いた品物が、大金となったことに味を占めて、更なる金儲けをすべく隣家の義弟の藤兵衛夫婦らと共に、大量の焼物を作り再び旅立ちます。 妻・宮木と息子は村へ残し、北近江から戦火を縫って大溝城下へ。陶器はよく売れ、大金を手にした源十郎でしたが、かねてから立身を夢見ていた藤兵衛は、妻を捨てて侍となることを選び失踪・・・。妻は一人でいるところを落ちぶれた武士らに手篭めにされてしまいます。 金に目のくらんだもの、出世に目がくらんだもの。ふたりの男の影で女たちは悲惨な状況へと追われます。 欲が身を滅ぼす―――。 その顛末は、虚しいものです。 取り戻すことのできない貧しくても幸せな暮らし・・・源十郎がそれに気づくには、恐ろしい経験をしたあとなのでした。 大溝城下、大量の品を買った朽木屋敷の若狭と名乗る美しい姫と出会った源十郎は、品物を届けにいったまま、彼女の魅力と魔力に抗うことができず屋敷に居ついてしまいます。 家族のことなど一切忘れて。 旅の僧が、彼の死相に気づき、厄払いの呪符を体に書き付けてくれなければ、そのまま取り付かれて生気を奪われ死んでしまうところでした。 今まで観てきた溝口作品とは一風違う、妖しく不気味な作品で、さりげなくも漂う怪談の雰囲気は惹きつけられます。 もののけである若狭の美しさもさることながら、モノクロ画面に浮かび上がる幻想的な映像の数々にも目がはなせません。 衛星放送の録画で、冒頭の解説にこうありました。 「溝口作品といえばなんといってもこの『雨月物語』だ」 「ワンシーンごとすべてがハッとするほど美しい」 細部は違ってると思いますが、トリュフォーとゴダールのこんな賞賛のコトバ。 期待せずにいられない感じですが、そのとおりほんとに美しく妖しい魅力的な映画でした。 監督/ 溝口健二 製作/ 永田雅一 脚本/ 川口松太郎 、依田義賢 音楽/ 早坂文雄 出演/ 京マチ子 、水戸光子 、田中絹代 、森雅之 、小沢栄太郎 、青山杉作 (モノクロ/97分) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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