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テーマ:■ムービー所感■(484)
カテゴリ:日本映画
片桐宗蔵(永瀬)は、人を斬ったことのない下級武士だが、師匠から秘剣・鬼の爪を授かっていた。かつての奉公人きえ(松)との実ることのない恋に心揺れる一方で、江戸屋敷で起こった謀反の首謀者、狭間弥市郎と浅からぬ因縁を持っていた彼は、この騒動に深く巻き込まれてしまうのだが――。 藤沢周平原作の時代劇「たそがれ清兵衛」「隠し剣 鬼の爪」、そして2006年公開「武士の一分」は山田洋次監督の時代劇三部作といわれています。 前後2作はまだ未見。 山田監督の作品は、「男はつらいよシリーズ」47作品からも、エンディングの爽やかな感動や切なさがイメージとしてありますが、こちらにもその温かさはしっかり息づいてます。 さすが人間ドラマを描く名匠。 年を追うごとに鋭さは削がれ、丸くなっていくものなのでしょう。 こんなふうに現代の時代劇を安心して観られることは、あまりないように思います。 セットや人物の描写も、細かいところも、ささやかな笑いも、とても馴染みやすいものでした。 演技派の主演ふたりが抑えた演技で好演しています。 脇を固める俳優さんには、山田組の吉岡秀隆、田中那衛がいて、何気にホッとする感も。 舞台は幕末。 西洋からの武器や戦い方が伝わり、武士としての生き様が大きく揺れ動く時代。 信・義・忠の精神さえ揺れ動く、幕末の不穏な空気をベースに、謀反を起こしたライバルとの決闘を命じられる片桐の苦悩を描きます。 奉公人きえへ淡い愛情を抱く、優しく真面目で秘剣を知る男・片桐の、身分違いの愛の行方を描いた恋愛映画でもあります。 キエは、旦那様を慕って止まない働き者。 いじらしいキエを演じる松たか子の、透明感ある演技で、互いに惹かれあうふたりの思いのゆく先を案じながら切なく観られました。 友情と命令の板ばさみ、腹黒いご家老(緒形拳)への憎しみ、無実の罪を被り切腹した父への想い・・・ どのエピソードもおろそかになっていません。 時間配分が上手い。 見ごたえある後半のチャンバラシーンから、隠し剣・鬼の爪が登場するタイミングまで、2時間強の長さを感じさせません。 御家老への復讐も良い。 ラスト、ほっと温かい気持ちになる、爽やかなハッピーエンドが、山田監督作品にはよく似合いますね。 監督 山田洋次 製作 久松猛朗 原作 藤沢周平 『隠し剣鬼ノ爪』『雪明かり』 脚本 山田洋次 、朝間義隆 音楽 冨田勲 出演 永瀬正敏 、松たか子 、吉岡秀隆 小澤征悦 、田畑智子 、高島礼子 緒形拳 (カラー/131分) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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