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カテゴリ:日本映画
江戸川乱歩の同名小説を、大胆にアレンジして映画化したファンタジック・ホラー。 明治末期。大徳寺雪雄(本木)は、大徳寺医院院長としての地位と名誉、そして若く美しい妻・りん(りょう)に囲まれ、誰もが羨むような境遇にあった。ただ気掛かりは妻・りんが雪雄と出会う前に遭った大火事のせいで記憶喪失になっていることだった。やがて、そんな彼に次々と不幸が襲い掛かる……。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 塚本晋也作品に江戸川乱歩の原作。はじめはピンときませんでしたが、塚本氏の映像感覚と共通点があり、思っていたよりもずっと良かったです。 映画や本で触れる‘明治’が、最近とても気になる私には、設定にも魅力を感じました。 和と洋の融合した部屋。調度品や家具、舞台となる旧家にいたるまで、なかなかいい雰囲気です。 大徳寺医院の若き医者・雪雄は、何不自由なく裕福に暮らしてきました。 美しい妻・りんとの出会いは奇妙であったけれど、記憶喪失以外は心配もなく幸せな毎日。 しかしいつの頃からか、どこかで誰かに見られているような視線を感じはじめます。 恐ろしい形で運命に翻弄されようとしていたのです――― 「はじめは平凡な雪雄とりん」 「りん(りょう)の痩身が美しく際立つシーン」 聡明かつ温厚な雪雄でしたが、ただひとつ、貧民窟だけは害毒と思えてならない欠点がありました。 ある時、両親が相次いで死ぬ奇怪な出来事を皮切りに、雪雄に忍び寄る魔の手。 彼は襲われ暗い井戸の底へ突き落とされてしまいます。 犯人は雪雄に瓜二つの男で、貧民街に住む・捨吉。 中身のまったく違うふたりの人物を、本木雅弘が熱演しています。 なぜこんな仕打ちを受けるのか…次第に明らかになっていく展開がおもしろい。 両親がひた隠していた出生の秘密を知った雪雄は、泥と残飯と虫にまみれた井戸の中で、壮絶な苦しみに耐えて生き延びますが、彼の姿は、いまや忌み嫌った貧民窟の人々のようになっていたのです…… 記憶を失くしたりんの秘密、捨吉の秘密、そして雪雄の秘密。 過去の因縁が絡みに絡んで、捨吉の復讐劇に巻き込まれた夫婦は、それぞれに抱えた現実と対峙します。 貧民窟の鮮烈な色使いと、変わらないグロテスクな映像が、塚本氏らしい。 今回は出演せず、本木雅弘に全部託して成功しているように思います。 撮影の過酷さが、見てるだけで伝わってくるほど、すごい映画ですね。。 美男子の本木雅弘がよくぞここまで演じたものです。 「シコふんじゃった。」に続いて感心してしまいました。 演技下手なイメージのりょうも、これまでにない面を引き出されていたように思います。 塚本氏はいつも痩身の女性をヒロインにしますが、今度のりょうも、今までの女優さんと同じく、一皮剥けた魅力を感じました。 「あるところに双生児が生まれ、ひとりの腿には真っ黒い蛇の痣がありました―――」 いかにも明治、いかにも乱歩原作の奇妙なお話。 かたや裕福な医者の息子、かたや貧民窟のやくざ。 運命の逆転でもって人間が変わる――それが静かにやってくるラストが好きでした。 変わらない短尺と、出演陣みんな眉がないのもいい。 監督・脚本・撮影・編集 塚本晋也 原作 江戸川乱歩 「双生児~ある死刑囚が教誨師にうちあけた話」 出演 本木雅弘 、りょう 、藤村志保 、筒井康隆 もたいまさこ 、麿赤児 (カラー/84分) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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