|
テーマ:■ムービー所感■(484)
カテゴリ:日本映画
幼い頃に亡くしたロシア人の父の血を継ぎ、透き通るように美しい薫(伊東美咲)は、勤め先で出会った漁師の邦一(佐藤浩一)のもとに嫁いでいった。武骨で真っ直ぐな邦一だったが、漁師の生活に溶け込めない薫との間には、いつしか溝が生まれ始めるのだった・・・。 そんな薫に、人知れず想いを募らせている男。それは邦一の弟、広次(中村トオル)であった…。 禁断の純愛と母娘愛を描いた作品。 ロシア人と結婚した母(三田佳子)を持つ薫と、薫が許されぬ愛の果てに遺した娘たち(蒼井優・ミムラ)の、三世代に渡る家族の姿を、描きます。 期待していなかったぶん、意外に良いところもありました。 観てから、中村トオルを久しぶりに観たかったことに気づきました。 映画初主演の伊東美咲の大胆な演技が、当時話題になっていましたが、彼女の美しさがとても引き立つ作品です。 決して巧くはないけれど、思い切りよく頑張ってるのを感じます。 舞台は函館から峠ひとつ隔てた南茅部(みなみかやべ)。 函館の名所が作品のなかに数々登場していました。 父親の船と家を継ぐ兄は、無骨で保守的な人。 反対に、すべてが兄の物だった子ども時代を送った弟は、故郷を離れて工場で働く、穏やかな人。 相反する性格の兄弟が、ひとりの女性を愛するなんて、メロドラマに登場してきそうな設定ではあります。 こういった邦画の恋愛ものは久しぶりにみたような、懐かしい感じ。 静かに時間をかけて、薫が兄から弟のものになるとき、そこに悲劇が待っていることを、冒頭から観客がわかる構成も良かったと思います。 メイキングで中村トオルが話していたように、弟・広次は兄のものだから薫を見初めたのかもしれません。 人生でたったひとつくらい、兄のものを奪ってやりたいという気持ちがあったのでしょう。 本気で愛していくまでの伏線は、ちょっと足りないかもしれません。 キリスト教徒のようでしたが、その辺も分かりにくくて、もしかしたらロシア人とのハーフである薫だからこそ、通じ合える部分があったのか・・・原作には更に奥にある因果が書かれているのかもしれませんね。 ただ説明不足とはいえ、佐藤浩一や母親を演じた白石加代子からは人物像はちゃんと伝わります。 従順なのに思い通りにならない妻を、力づくで体だけは所有しようとする邦一が痛々しい。 邦一に抱かれる時と、たった一度だけ広次に抱かれる時。 薫がまったく違う表情を見せるのが印象に残ります。 セックス描写は、たしかに多すぎるのかもしれませんね~ でも過激にじゃなく、隠すところ隠して綺麗に撮ってるのは好印象です。 薫の二人の娘が年頃になり、初めて母親の過去を知る――というストーリーもいいです。 ひとしきり80年代の薫の生き様を観てから、娘たちの現在の葛藤を観る。 そして再び伊東美咲が映し出された時、なんともえない熱い思いが湧いてきたのは、自分でも意外でした。 ‘薫’という人の、儚くて美しくて強い姿が、最後にちゃんと胸に迫ってきました。 薫が生きた時代、80年代のムードと合わせて、なんだか懐かしい作品でした。 監督 森田芳光 原作 谷村志穂 『海猫』 脚本 筒井ともみ 音楽 大島ミチル 出演 伊東美咲 、佐藤浩市 、仲村トオル 、ミムラ 三田佳子 、蒼井優 、白石加代子 (カラー/129分) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[日本映画] カテゴリの最新記事
|