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2007.07.30
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カテゴリ:イスラエル映画


  1967年6月11日、終戦を間近に控えたシナイ砂漠を敗走する4人のエジプト兵。
ひとりは敵弾に倒れ、なおも戦おうとする隊長をハレド(サリム・ドウ)が殺し、ガッサン(スヘル・ハダッド)と二人、武装解除して水も食料もないまま、スエズ運河目指して歩きだすのだった―――。



 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



  お世話になっているchappie the gogo!さんから、以前おすすめしていただいた作品です。
期待通りの良質な反戦映画でした。
そこはかとない明るさが、戦争映画であっても親しみを感じさせる良作。
内容やラストが、どこかで観たことのある展開だとしても、製作国の色で捉えるほうの意識も変わります。
20年前の作品ですが、今でも十分な見ごたえでした。


生き残ったエジプト兵たちの、ささやかなロードムービーといっていいのかもしれません。
無茶な攻撃を続ける隊長を殺して、砂漠に孤立する二人の兵士たち。
彼らは過酷な砂漠を、スエズ運河目指して歩き始めるのです。

喉がカラカラで死にそうな彼らが見つけたのは、国連のジープ。
死体が乗っている以外は問題なく、座席の下には酒ビンが転がっているという運の良さ。
すっかり酩酊状態のまま、ジープで砂漠をかっ飛ばす爽快なシーンがシュールです。
何処に敵がいるやもしれない中を、勢いにまかせて運河へ走る!
酔わなければ、まともでなんていられないような、渇きと戦場の恐ろしさ・・・
その恐ろしささえすっ飛ばすほどに、小気味良い展開が魅力でした。

結局、砂にはまってあえなくジープを乗り捨てることとなる二人・・・
そうして再び死にそうな彼らが出会ったのは、運河を目指すイスラエル人兵士たちでした。



この作品は、製作国であるイスラエルが、あえてエジプト兵の目線から戦争を描いています。
敵同士に芽生える友情は、テーマとしては珍しくないけれど、酩酊状態の奇妙で滑稽なエジプト兵士たちに、次第にほだされていく様子など、いたるところで情を感じます。
どんないきさつで酔ったエジプト兵がたった二人歩いているのか・・・彼らを見るイスラエル兵の複雑な気持ちが面白い。
「捕虜にはしない」
そういわれてもしつこく付きまとって、仕方なしに共に過ごす一日。
役者だというハレドがみせる滑稽な芝居は、思いがけないインパクトの残るシーンでした。


翌朝、まだ眠っているふたりを置いて、そっと出発したイスラエル兵士たちが横切ったのは、地雷原のなか。
エジプト語で「地雷注意」の立て札があったのに、その注意書きをイスラエル兵は読めずに進んでしまうのです・・・。

誰が生き、誰が死ぬのか、予想もつかない戦争下の出来事。
弱い立場だった者が、なぜが最後まで生きている。
絶対はない世界で、友情を信じても、武器を捨てても、死ななければならない時がやってくる。
不条理の一言に尽きる結末でした。

短い旅の果ては、やっぱり広大な水。
こちらでは運河でしたが。物語の最後に衝撃と空しさを飲み込む水があることを、意識せずにはいられませんでした。
タイトルの「アバンチ・ポポロ」は進め!人民という意味だそうです。
本編中に流れるこのタイトルで始まる曲がいい。
夕日をバックに行進する姿も、二番煎じといわないで。素直に味のあるシーンと思えます。



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 製作・監督・脚本  ラフイ・ブカイー
 撮影  ヨアヴ・コシュ
 音楽  ウリ・オフィル
 出演  サリム・ドゥ 、スヘル・ハダッド
      ツブヤ・ゲルバー

 
ap.jpg    (カラー/85分)








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Last updated  2007.08.06 17:05:50
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