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行きかふ人も又

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2007.10.23
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カテゴリ:多国合作映画


  1945年8月。疎開した皇后や皇太子らとも離れ、地下の研究所で生活を送る天皇。
敗戦が決定的となり、国民に平和をと願う天皇は降伏を示唆するのだった。
マッカーサーとの会見などを経て、"人間宣言"を決断するまでを描く―――。


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面白い。
当時は神格化されていた天皇の、心の葛藤と孤独を、穏やかに静かに描いた異色作。
カラーであっても抑えられたトーンは、時にセピアやモノクロのように映ります。
うまく幻想シーンを取り入れることで、細部が気にならずに、異国の人々から見た日本の姿を受け止めやすくなっていました。
押し付けがましいところはひとつもなく。
捉える視線が優しかった。


酷い戦争とはうらはらに、現人神とされ崇められる天皇の存在。
周りに絶えず侍従らがいようと、その孤独は計り知れないものがありました。
ときに、子どもように、精神の衰弱さえ感じる天皇を、イッセー尾形が熱演しています。
彼特有のユーモアは健在で、海外製作の映画のなかに、それが活かされていることに驚きました。
そして、ユーモアだけじゃない、高貴で孤高な精神までしっかり人物から感じとれるのでした。

“天皇”という、とても量りきれない人物であっても、その人となりを好意的に見られたのは、演出と役者さんによるものが大きいのではないでしょうか。
日本が戦争をしていたころ。
その存在は、国勢に流されるばかりだったのでしょうか。
玉音放送の翌年、一月一日になされた“人間宣言”で、国のあり方を変え、新日本建設を望んだ昭和天皇ヒロヒト。
高貴であって風変わりな身のこなしも、震える口元も、記憶の中のイメージにぴったりと合わさります。


悪夢のシーンで、大空襲を幻想的に描いていたのが印象深い。
あえて戦闘機は、CGを使い、真っ黒な架空の魚として、空を飛びます。
得体の知れないものの恐怖、縦横無尽に飛び回る様は、手に負えない怪物のように。


とても静かで、豪奢なセットが見事。
気高さの伝わってくる、じっくりと観られる作品でした。
とにもかくにも、イッセー尾形の存在、間が抜群。
登場は僅かでしたが、侍従の佐野史郎、皇后の桃井かおりも好演です。
役者さんに拍手ぱー したくなる、そんな作品でした。



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監督  アレクサンドル・ソクーロフ
製作  イゴール・カレノフ  アンドレイ・シグレ  マルコ・ミュレール
脚本  ユーリー・アラボフ
編集  セルゲイ・イワノフ
音楽  アンドレイ・シグレ
出演  イッセー尾形  ロバート・ドーソン  佐野史郎  桃井かおり

(カラー/ロシア・フランス・イタリア・スイス合作/115分)










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Last updated  2007.10.24 19:01:04
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