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テーマ:■ムービー所感■(484)
カテゴリ:多国合作映画
1945年8月。疎開した皇后や皇太子らとも離れ、地下の研究所で生活を送る天皇。 敗戦が決定的となり、国民に平和をと願う天皇は降伏を示唆するのだった。 マッカーサーとの会見などを経て、"人間宣言"を決断するまでを描く―――。 面白い。 当時は神格化されていた天皇の、心の葛藤と孤独を、穏やかに静かに描いた異色作。 カラーであっても抑えられたトーンは、時にセピアやモノクロのように映ります。 うまく幻想シーンを取り入れることで、細部が気にならずに、異国の人々から見た日本の姿を受け止めやすくなっていました。 押し付けがましいところはひとつもなく。 捉える視線が優しかった。 酷い戦争とはうらはらに、現人神とされ崇められる天皇の存在。 周りに絶えず侍従らがいようと、その孤独は計り知れないものがありました。 ときに、子どもように、精神の衰弱さえ感じる天皇を、イッセー尾形が熱演しています。 彼特有のユーモアは健在で、海外製作の映画のなかに、それが活かされていることに驚きました。 そして、ユーモアだけじゃない、高貴で孤高な精神までしっかり人物から感じとれるのでした。 “天皇”という、とても量りきれない人物であっても、その人となりを好意的に見られたのは、演出と役者さんによるものが大きいのではないでしょうか。 日本が戦争をしていたころ。 その存在は、国勢に流されるばかりだったのでしょうか。 玉音放送の翌年、一月一日になされた“人間宣言”で、国のあり方を変え、新日本建設を望んだ昭和天皇ヒロヒト。 高貴であって風変わりな身のこなしも、震える口元も、記憶の中のイメージにぴったりと合わさります。 悪夢のシーンで、大空襲を幻想的に描いていたのが印象深い。 あえて戦闘機は、CGを使い、真っ黒な架空の魚として、空を飛びます。 得体の知れないものの恐怖、縦横無尽に飛び回る様は、手に負えない怪物のように。 とても静かで、豪奢なセットが見事。 気高さの伝わってくる、じっくりと観られる作品でした。 とにもかくにも、イッセー尾形の存在、間が抜群。 登場は僅かでしたが、侍従の佐野史郎、皇后の桃井かおりも好演です。 役者さんに拍手 したくなる、そんな作品でした。 監督 アレクサンドル・ソクーロフ 製作 イゴール・カレノフ アンドレイ・シグレ マルコ・ミュレール 脚本 ユーリー・アラボフ 編集 セルゲイ・イワノフ 音楽 アンドレイ・シグレ 出演 イッセー尾形 ロバート・ドーソン 佐野史郎 桃井かおり (カラー/ロシア・フランス・イタリア・スイス合作/115分) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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