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テーマ:■ムービー所感■(484)
カテゴリ:日本映画
東京で写真家として成功し、自由奔放に生きる弟・猛(オダギリ)は、母親の一周忌に久々に帰郷した。 父と共にガソリンスタンドを経営する兄・稔(香川)と再会し、翌日、兄弟はガソリンスタンドで働く、幼なじみの智恵子と3人で近くの渓谷へ出かけた。 ところが、川に架かる細い吊り橋で、智恵子が眼下の渓流へと落下・・・数日後“自分が突き落とした”と稔は自供する。 法廷で語られていく真実とは――― 性格の違う兄弟が、相手そして自分の本質と向き合った時に、初めて痛々しくも純粋な結末に出会えます。 親子の間で繰り返されていく、兄弟の不仲が悲しかった。 いままで本音を隠してきた稔と猛のように、人は本音を隠しながら、ある程度人と付き合っているものなのでしょう。 それは親兄弟姉妹に対してもそうで、気づいているけど、知らないフリをしているような気がします。 母親の一周忌に、久しぶりの帰省をした猛。 なりゆきで渓流へ行くとにさえならなければ、事件は起こっていなかった。 何十年分もの思いが不意に飛び出すと、それは考えられないような行動を伴って、大きな犠牲を生みながら、周りに及んでいきました。 真相を明らかにするタイミングもあわせて、よく練られた物語だと思います。 後半、舞台が法廷に変わってからも、チクチクと継続するなにかがありました。 映像には、腰の据わった居心地よさがあったし、なにより個性派の役者さんがそれぞれによくて。 香川照之はあまりに巧く、オダギリジョーの魅力を時々霞ませるほどでした。 役者さんの巧さって、こういうことをいうのでしょうね。 猛の存在は、悲しいです。 これだけの過ちを犯さなければ、わからないその存在が。 田舎の親兄弟の生き方を忌み嫌い、逃げ出すように都会にきて、快楽もお金も得ている。 それなのに満足できない。 奪うだけの生き方は、都会の暗部とあわせて、現代人の悪いところの寄せ集めのようです。 反面、田舎の兄は、完全なる善人で...どこをどう見ても溝がある。 その溝が埋められるのだとすれば、それはやっぱり傷ついてでも、自分の本質をさらけ出し合って、相手を知るしかないのでしょうか。 その後に、やっぱり溝が残って、完全に修復がきかなくなるか、この兄弟のようになるかは、きっと人それぞれ。 監督・脚本 西川美和 製作 川城和実 、重延浩 、八木ケ谷昭次 撮影 高瀬比呂志 音楽 カリフラワーズ 出演 オダギリジョー 、香川照之 、伊武雅刀 、新井浩文 (カラー/119分) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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