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テーマ:■ムービー所感■(484)
カテゴリ:日本映画
終戦を間近に控えた昭和20年、瀬戸内の田舎町。 赤城(柄本明)はこの町の開業医で、患者を誰でも“肝臓病”と診断することから、人々に“カンゾー先生”と揶揄されていた。 ひょんなことから赤城は、この町にはめずらしい美人の少女ソノ子(麻生久美子)を病院で働かせ預かることになる。 しかし、ソノ子は根はまじめながら、女郎だった母親の教えもあって、時々男に体を売っていた……。 いい映画でした。戦時中の瀬戸内の町を舞台に、可笑しく風刺たっぷりに描かれる人間ドラマ。 迫力ある描写や演出のパワーがすごい。エロチシズムは今村監督らしい要素。 「開業医は足だ 片足折れなば片足にて走らん 両足折れなば手にて走らん 疲れても走れ寝ても走れ 走りに走りて生涯を終らん」 そんな訓示を頑なに守ってきたカンゾー先生こと赤城が、面倒見ることになった若い娘・ソノ子。 彼女からの一方的な思慕の念を、まんざらでもなく受け流す赤城。 そんな中、患者が増える一方の‘肝臓炎’に、医者仲間らと共に果敢に挑み始めるのでしたが・・・ モルヒネ中毒の外科医(世良)や、アル中の坊さん、淫売をなかなか止められないソノ子など、風変わりな面々が見せる肝臓への執念と狂気。 そこへ脱走してきたオランダ兵捕虜も加わって、真面目に足を使い、走り続けてきた赤城の毎日が激変してゆくのでした――― 戦争による栄養不足から、肝臓を患う人が激増。 はじめは、胸を痛める赤城が、治療のためと称してブドウ糖注射を栄養代わりに打っているのかと思いました。 でも実際は狂言でもなんでもない、真面目に心底‘肝臓’に取りつかれていただけ。 戦局傾くなか、もう大概まともな人はいなくなってしまう様が可笑しく怖ろしく描かれていきます。 そこに、ただ一心に、カンゾー先生を思う、健気で元気なソノ子がいる。 彼女の逞しい強さ、まだ未熟な演技であっても、麻生久美子は存在感あって好演でした。 たじたじとするカンゾー先生役の柄本明も、とってもいい。 ラストの鯨との死闘が、なんともいえません。突然の自然界との格闘。 そして空には大きなきのこ雲・・・・ 驚かされる演出がたくさんでした。 鯨に逃げられ、船の上で赤城に甘えるソノ子。青空には突如爆発とともに、不気味なキノコ形の雲が現れます。 それは次第に肝臓形に流れのびていく―――なんともシュールなラストでした。 微妙に違う表紙。このビデオのがすき。 監督 今村昌平 原作 坂口安吾 脚色 今村昌平 、天願大介 撮影 小松原茂 音楽 山下洋輔 、栗山和樹 出演 柄本明 、麻生久美子 、ジャック・ガンブラン 、松坂慶子 世良公則 、唐十郎 、田口トモロヲ (カラー/日本映画/129分) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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