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行きかふ人も又

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2007.12.12
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カテゴリ:日本映画

 砂丘地帯に昆虫採集にやってきた男(岡田)は、その砂の穴の中で暮らす女(岸田)の家に一夜の宿を借りる。
しかし、四方の砂を掻き出す労働力として囚われの身となり・・・。


kishidakyoko.jpg news_dunes2.jpg




 安部公房さんの原作がとても面白かった「砂の女」。この凄い本がどんなふうに映画になるのか、それより映像にできるものかと、半信半疑でしたが、かなり良く出来た作品でした。
こちらも死ぬまでに観たい映画1001本に選ばれていて、カンヌで審査員特別賞を受賞しています。


様々な恐怖が同居した、怖ろしい物語ですね~
部落で起こる閉塞感、助けの及ばない恐怖。
わずか八分の一ミリの砂は水のように流動して、絶え間なく押し寄せ気持ちを溺れさせます。
汗ばむ体にまとわりつく、小さな粒子のおぞましさ。
乾いているから砂なのに、砂は物を腐らせる。なんて捉えどころのない・・・。


そこはどうあがいてもよじ登ることはできない、まさに蟻地獄です。
部落総出の罠に嵌められた男の怒りといったら!想像しただけでもサブイボが立ちますね。
誰に何の権利があって、自由を奪われなきゃならないのか、理不尽もいいところです。
怖い、焦燥、そこに美しい風紋が交互に描かれる。
なんとも、圧倒されるばかりでした。
まともじゃない環境に置かれて、そこには憂いを帯びた艶めかしい女がいる。
逃げられない、いわば密室で、当然のなりゆきとでもいうように女と目合った男の後の運命とは・・・・


女を演じた岸田今日子さん、お若いです。
そして怖い。この頃からかなり怖いです。
男の体を拭くことに無上の喜びを感じる、恍惚とした表情は一見の価値ありではないでしょうか。

どんなに絶望しても、主人公は逃げ出す方法を模索し続けます。
人間の飽くなき希望と本能を、見事に描き出した名作。
生きる価値を見出してゆくラストは素晴らしい。こんなラストだから余計に怖い。
原作に負けずとも劣らない、濃い作品になっていました。


冒頭の印鑑でデザインされたオープニングロールがシュール。
映画監督とばかり思っていた勅使河原さんですが、華道の家元だそうで、ほかにも書道や陶芸など、多岐にわたって才能を発揮された方なのだそうです。
芸術的な創作センスが、映画に生きている。そんな面白い作品でした。



4988126201036.jpg


監督  勅使河原宏
製作  市川喜一 、大野忠
原作  安部公房
脚本  安部公房
音楽  武満徹
出演  岡田英次 、三井弘次 、岸田今日子、伊藤弘子 、矢野宣

(モノクロ/147分)









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Last updated  2007.12.13 22:45:46
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