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テーマ:■ムービー所感■(484)
カテゴリ:日本映画
砂丘地帯に昆虫採集にやってきた男(岡田)は、その砂の穴の中で暮らす女(岸田)の家に一夜の宿を借りる。 しかし、四方の砂を掻き出す労働力として囚われの身となり・・・。 安部公房さんの原作がとても面白かった「砂の女」。この凄い本がどんなふうに映画になるのか、それより映像にできるものかと、半信半疑でしたが、かなり良く出来た作品でした。 こちらも死ぬまでに観たい映画1001本に選ばれていて、カンヌで審査員特別賞を受賞しています。 様々な恐怖が同居した、怖ろしい物語ですね~ 部落で起こる閉塞感、助けの及ばない恐怖。 わずか八分の一ミリの砂は水のように流動して、絶え間なく押し寄せ気持ちを溺れさせます。 汗ばむ体にまとわりつく、小さな粒子のおぞましさ。 乾いているから砂なのに、砂は物を腐らせる。なんて捉えどころのない・・・。 そこはどうあがいてもよじ登ることはできない、まさに蟻地獄です。 部落総出の罠に嵌められた男の怒りといったら!想像しただけでもサブイボが立ちますね。 誰に何の権利があって、自由を奪われなきゃならないのか、理不尽もいいところです。 怖い、焦燥、そこに美しい風紋が交互に描かれる。 なんとも、圧倒されるばかりでした。 まともじゃない環境に置かれて、そこには憂いを帯びた艶めかしい女がいる。 逃げられない、いわば密室で、当然のなりゆきとでもいうように女と目合った男の後の運命とは・・・・ 女を演じた岸田今日子さん、お若いです。 そして怖い。この頃からかなり怖いです。 男の体を拭くことに無上の喜びを感じる、恍惚とした表情は一見の価値ありではないでしょうか。 どんなに絶望しても、主人公は逃げ出す方法を模索し続けます。 人間の飽くなき希望と本能を、見事に描き出した名作。 生きる価値を見出してゆくラストは素晴らしい。こんなラストだから余計に怖い。 原作に負けずとも劣らない、濃い作品になっていました。 冒頭の印鑑でデザインされたオープニングロールがシュール。 映画監督とばかり思っていた勅使河原さんですが、華道の家元だそうで、ほかにも書道や陶芸など、多岐にわたって才能を発揮された方なのだそうです。 芸術的な創作センスが、映画に生きている。そんな面白い作品でした。 監督 勅使河原宏 製作 市川喜一 、大野忠 原作 安部公房 脚本 安部公房 音楽 武満徹 出演 岡田英次 、三井弘次 、岸田今日子、伊藤弘子 、矢野宣 (モノクロ/147分) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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