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テーマ:■ムービー所感■(484)
カテゴリ:日本映画
奈良県北部の山間地に建つグループホーム。そこでは、認知症を患った老人たちが共同生活を送っている。 33年前に妻を亡くしたしげきと、赴任してきた介護福祉士の真千子は、次第に心を通わすようになるが、ある日しげきの妻の墓参りへ出掛けたふたりは、“殯の森”の中に迷い込んでいくのだった――― 喪があけるのは一年でも、気持ちが喪から立ち直る日は、別。 幼い子どもを不慮の事故で亡くした真千子も、随分昔に妻を亡くしたしげきも、喪失感を抱え続けていて、そこから解き放たれるまでの姿を描いた真摯な物語でした。 河瀬監督は、奈良を舞台とした作品を撮る方だそう。それだけに、土地の魅力が溢れているのは当然といえるのかも。 神秘な森、妻の眠る殯(もがり)の森を、魂の限りにさ迷い歩くしげきと真千子からは、並じゃない迫力を感じます。 自然なかたちで撮られた映像には、リアリティがありますが、台詞はやや聴き取りにくいです。 描きたかったことはよく伝わり内容も好きだけれど、森羅万象に魂が宿ると、おぼろげにも感じて生きている日本人にとって、神秘な力にはさほど衝撃を受けない作品なのかもしれません。 カンヌでは、より神秘的に映ったのではないでしょうか。 森に迷い、命の危険に晒される二人。自分が生きている実感がなくても、互いに相手を助ける行動に出るシーンが胸を打ちます。 そうすることで、自分がいま生きている実感をも、得ていったのでしょう。 しげきの弔いの姿を傍で見ながら、真千子が救われていくところも、よかった。 人の繋がりが、いいと思える。 ラストで、森のざわめきのなかにオルゴールが響いて、多少の違和感が。自然を前面に感じたあとで、無機質な音。なにか違うような気がして残念。 監督・脚本 河瀬直美 製作総指揮 ヘンガメ・パナヒ 撮影 中野英世 音楽 茂野雅道 出演 うだしげき しげき 尾野真千子 渡辺真起子 ますだかなこ (カラー/97分/日本・フランス合作) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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