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行きかふ人も又

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2008.01.23
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カテゴリ:日本映画

 奈良県北部の山間地に建つグループホーム。そこでは、認知症を患った老人たちが共同生活を送っている。
33年前に妻を亡くしたしげきと、赴任してきた介護福祉士の真千子は、次第に心を通わすようになるが、ある日しげきの妻の墓参りへ出掛けたふたりは、“殯の森”の中に迷い込んでいくのだった―――



 喪があけるのは一年でも、気持ちが喪から立ち直る日は、別。
幼い子どもを不慮の事故で亡くした真千子も、随分昔に妻を亡くしたしげきも、喪失感を抱え続けていて、そこから解き放たれるまでの姿を描いた真摯な物語でした。

河瀬監督は、奈良を舞台とした作品を撮る方だそう。それだけに、土地の魅力が溢れているのは当然といえるのかも。
神秘な森、妻の眠る殯(もがり)の森を、魂の限りにさ迷い歩くしげきと真千子からは、並じゃない迫力を感じます。

自然なかたちで撮られた映像には、リアリティがありますが、台詞はやや聴き取りにくいです。
描きたかったことはよく伝わり内容も好きだけれど、森羅万象に魂が宿ると、おぼろげにも感じて生きている日本人にとって、神秘な力にはさほど衝撃を受けない作品なのかもしれません。
カンヌでは、より神秘的に映ったのではないでしょうか。

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森に迷い、命の危険に晒される二人。自分が生きている実感がなくても、互いに相手を助ける行動に出るシーンが胸を打ちます。
そうすることで、自分がいま生きている実感をも、得ていったのでしょう。
しげきの弔いの姿を傍で見ながら、真千子が救われていくところも、よかった。
人の繋がりが、いいと思える。

ラストで、森のざわめきのなかにオルゴールが響いて、多少の違和感が。自然を前面に感じたあとで、無機質な音。なにか違うような気がして残念。




監督・脚本  河瀬直美
製作総指揮  ヘンガメ・パナヒ
撮影  中野英世
音楽  茂野雅道
出演  うだしげき しげき  尾野真千子  渡辺真起子  ますだかなこ

(カラー/97分/日本・フランス合作)







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Last updated  2009.12.02 23:06:26
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