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行きかふ人も又

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2008.02.03
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カテゴリ:ポーランド映画

 もとはTVドラマだった10篇の短編が、のちに質の高さから劇場公開に至ったキエシロフスキの『デガローグ』。
ワルシャワ郊外の住宅地を舞台として、旧約聖書の十戒をモチーフに、様々な人間模様を綴ります。
DVDにはそれぞれに2話ずつ収録されています。



『ある運命に関する物語』


 (あらすじ)世の中のものすべてが数字で解釈できると信じる大学講師の父と、その考えを楽しみ父を尊敬する息子と、信心深い伯母。
この三人に運命の日が訪れる―――。



 確かなものはなにもないという、監督の率直な表現を真摯に受け止めるだけ。
主人公たちが、無言で語るその言葉の多さは、きっと他に類をみないほどです。
暗くて静かでも、作品から視線を離せない、キエシロフスキの手腕に溜め息がでます。素晴らしい。

「死とはなに?」そう尋ねる少年に、父は答えます。
「魂はほんとうはないんだよ。あると考える方が楽なだけさ。死んだ後に残るのは、その人が生きた記憶・・・」
この会話がそのまま伏線になって、不穏な空気が流れ始める。
神を信じない合理主義の弟(父親)と、それに倣う息子に、伯母さんは疑問を投げかけています。ほんとうに、神はいないのかと。

クリスマス間近のある寒い日。早く池でスケートがしたいと、親子は方程式で氷の厚さをはじき出します。
翌日、夕方になっても帰らない息子を案じながら、父は昨夜の計算が誤りであったことに、気づき始めるのです。運命の誤差を。
息子の命と引き換えに彼が得たものは、なんだったのだろう。
なにもかもが数字ではじき出せると信じる彼が、予感というものに頼ったことが印象に残ります。



『ある選択に関する物語』


 (あらすじ)主人公である医者の前に現れる婦人。
彼女はアパートの上階に住む人妻で、彼が診るガン患者の妻でした。彼女は夫の死期は近いのか、それとも助かるかと幾度も詰め寄ります。ある理由を抱えて―――。



 孤独な医者と、奔放に生きてきたらしい人妻。二人は水と油のように、交わることが難しい。
医者は彼女を助けたいと心から思うことはできないし、理解もしきれない。彼女は利己的で、目下の決断を下すことさえ、まともにできないほど混乱しています。

夫以外の相手と関係を持ち、いま身篭っている人妻。病院のベッドで病に臥せる夫の、回復の確立を知りたくて仕方ありません。
堕胎を決めかねて悩み、ついには医者に何度も詰め寄るのでした。

この選択は究極。死ぬなら産む、生きるなら堕ろす。同情の余地ない彼女の行いと決断は、やはり誤った選択をしてしまいます。
“神様の罰が当たった”
もしも神がいるのなら、そう言われるような結末。





監督  クシシュトフ・キエシロフスキ
製作  リシャルト・フルコフスキ
脚本  クシシュトフ・キエシロフスキ  クシシュトフ・ピエシェヴィッチ
撮影  アンジェイ・ヤロシェヴィチ
音楽  ズビグニエフ・プレイスネル

(カラー/567分/DECALOGUE)








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Last updated  2009.11.19 21:58:12
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