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テーマ:■ムービー所感■(484)
カテゴリ:ポーランド映画
もとはTVドラマだった10篇の短編が、のちに質の高さから劇場公開に至ったキエシロフスキの『デガローグ』。 ワルシャワ郊外の住宅地を舞台として、旧約聖書の十戒をモチーフに、様々な人間模様を綴ります。 DVDにはそれぞれに2話ずつ収録されています。 『ある運命に関する物語』 (あらすじ)世の中のものすべてが数字で解釈できると信じる大学講師の父と、その考えを楽しみ父を尊敬する息子と、信心深い伯母。 この三人に運命の日が訪れる―――。 確かなものはなにもないという、監督の率直な表現を真摯に受け止めるだけ。 主人公たちが、無言で語るその言葉の多さは、きっと他に類をみないほどです。 暗くて静かでも、作品から視線を離せない、キエシロフスキの手腕に溜め息がでます。素晴らしい。 「死とはなに?」そう尋ねる少年に、父は答えます。 「魂はほんとうはないんだよ。あると考える方が楽なだけさ。死んだ後に残るのは、その人が生きた記憶・・・」 この会話がそのまま伏線になって、不穏な空気が流れ始める。 神を信じない合理主義の弟(父親)と、それに倣う息子に、伯母さんは疑問を投げかけています。ほんとうに、神はいないのかと。 クリスマス間近のある寒い日。早く池でスケートがしたいと、親子は方程式で氷の厚さをはじき出します。 翌日、夕方になっても帰らない息子を案じながら、父は昨夜の計算が誤りであったことに、気づき始めるのです。運命の誤差を。 息子の命と引き換えに彼が得たものは、なんだったのだろう。 なにもかもが数字ではじき出せると信じる彼が、予感というものに頼ったことが印象に残ります。 『ある選択に関する物語』 (あらすじ)主人公である医者の前に現れる婦人。 彼女はアパートの上階に住む人妻で、彼が診るガン患者の妻でした。彼女は夫の死期は近いのか、それとも助かるかと幾度も詰め寄ります。ある理由を抱えて―――。 孤独な医者と、奔放に生きてきたらしい人妻。二人は水と油のように、交わることが難しい。 医者は彼女を助けたいと心から思うことはできないし、理解もしきれない。彼女は利己的で、目下の決断を下すことさえ、まともにできないほど混乱しています。 夫以外の相手と関係を持ち、いま身篭っている人妻。病院のベッドで病に臥せる夫の、回復の確立を知りたくて仕方ありません。 堕胎を決めかねて悩み、ついには医者に何度も詰め寄るのでした。 この選択は究極。死ぬなら産む、生きるなら堕ろす。同情の余地ない彼女の行いと決断は、やはり誤った選択をしてしまいます。 “神様の罰が当たった” もしも神がいるのなら、そう言われるような結末。 監督 クシシュトフ・キエシロフスキ 製作 リシャルト・フルコフスキ 脚本 クシシュトフ・キエシロフスキ クシシュトフ・ピエシェヴィッチ 撮影 アンジェイ・ヤロシェヴィチ 音楽 ズビグニエフ・プレイスネル (カラー/567分/DECALOGUE) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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