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テーマ:■ムービー所感■(484)
カテゴリ:多国合作映画
「レッド・バイオリン」がミステリアスで良かったフランソワ・ジラール監督の最新作。9年ぶりの新作です。 前作に同じく、にわかにミステリアスな物語。 2時間弱に詰め込まれる中身が膨大で、そこに巧さを感じますが、結果後に残るものが薄いのは前作に同じ。 監督にわかっていても、観客には伝わっていない、そんな感じです。 (あらすじ)19世紀のフランス。戦争帰りの青年エルヴェ(ピット)は美しいエレーヌ(ナイトレイ)と結婚し幸せの只中にいた。彼の住む村では製糸工場が稼働するが、やがて蚕の疫病が発生してしまう。そこでエルヴェは、世界で最も美しい絹糸を吐く蚕の卵を求め、果てなく遠い日本へと赴く役目を任される。 辿りついた日本は幕末の時代。裏の顔を持つ蚕業者・原十兵衛が治める村で、十兵衛の妻として仕える少女と運命的な出会いをしたエルヴェだったが―――。 まず、主人公がフランス人なのに英語を話しているところに違和を感じました。珍しいことではないけれど、作品によっては言葉は大事ではないでしょうか。 製作にアメリカは入ってないのだから、ハリウッド色の濃くない別の主役はいなかったのでしょうか。 ジラールはカナダ人、英語じゃなきゃダメだったのかと思うと残念。前作はどうたったろう、もう忘れてしまった。 愛し合う新婚夫婦。夫は危険な軍人をやめ、製糸工場を経営するやり手のバルダビュー(モリナ)に雇われ、蚕の卵を求めて遠い異国・日本へ旅立ちます。 遥かなる陸路を進み、極寒の大地を横切り、数か月もかけて到達した未知の国・日本。 言葉も風習もわからぬまま、世話になったのは村の蚕業者・原十兵衛(役所)の屋敷でした。 そこで彼をもてなす、絹のように美しい十兵衛の妻(芦名)。 出逢ってすぐ互いに惹かれあう二人でしたが、取引が終わり急いで帰国の途につかねばならないエルヴェは、日本語で書かれた一枚の手紙だけを受け取り、村を去るのでした。 同じ旅がもう一度繰りかえされ、その度に夫婦の様子がほんの少しずつ変わっていく妙。 ふたりの愛は変わらないのに、夫エルヴェの心には消えない恋慕があります。 後ろめたさよりも、ただぬぐえない惹かれる思い。 いつしか居ても立ってもいられず、日本人の未亡人(中谷)が経営する娼館を訪れ、手紙の日本語の意味を尋ねますが、それを知ったらなお更に、再び会いに日本へ行きたいという思いが募るのでした。 危険な道であるのに、国情は悪化しているのに、もう一度日本へ行きたいと・・・ 子どもができないという悩みこそあれ、仲睦まじく愛し合っている夫婦は、蚕を手に入れたことで富み、新居や広い庭まで手に入れて幸せに暮らし続けます。 庭園には花が咲き誇り、美しいふたりの愛の結晶のよう。 軍人でなくなったあとも、まだ危険な人生を歩んでいるエルヴェは、平安以外のなにかを無意識のうち、求めていたのでしょうか。 妻エレーヌがひとつの所から動かないのと反対に。彼女が行動を起こすのは、ただ一度だけでした。 安らぎを愛す妻と、危険に突き進んでいってしまう夫、愛し合う二人の違いが仄かに切ない。 後半、彼の元に送られてくる一通の日本語の手紙。 日本から届いたその手紙を、再びエルヴェが訳すころ・・・三度目の渡日が決まるのでした。エレーヌの不安は募るのに・・・。 妻が病に倒れてから、どことなくミステリアスにきた物語が大きく動きます。 妻の愛、美しい女に惑った夫。どちらも「レッド・バイオリン」と同じく、ある出会いによって人生を変えられてしまう。 けれど妻の愛が第一の見所なら、それは上手くいってはいません。 日本でのシーンに大げさなものはないけれど、神秘と静寂が、フランスのシーンを霞ませていました。 ふたつの世界はかけ離れていて、接点が薄れ、情緒が続かない。 かといって日本でのシーンがすごくいいわけでもなく。 原作は「海の上のピアニスト」の作者でもあるアレッサンドロ・バリッコ。きっと本は、もっと良いのでしょう。ドラマがあって浪漫があって。 その浪漫を感じさせてくれるのは、ジラール監督の上手さでもあるのですが、今回は今ひとつ足りませんでした。 娼館の未亡人を演じた中谷美紀は、以前読んだ彼女の著作で思ったとおり、見事な発音を披露していました。役所さんの英語は相変わらずお達者。 こんな風に、日本人が海外の作品で活躍している姿を拝見すると嬉しくなります。 反面、芦名星は、絹のようには美しくなかったかな~と思ったり。一目会って恋に落ちた、叶わぬ恋の苦しみというのが、彼女の涙からも演技からも伝わらないのは残念でした。 今回あらためて気づいたのは、キーラ・ナイトレイがあまり好きじゃないこと。若さがないよね、若いのに!「穴」で初めて観てから良さがわかりません。 マイケル・ピットはディカプリオに似てる。タイプじゃないのは丸顔だからでしょうか。 主演に対する思いいれもないからか?余計に辛口なのでした。 この作品、ジラール監督と気付かなければ、きっと劇場では観ていませんでした。 監督 フランソワ・ジラール 製作 ニヴ・フィックマン ナディーヌ・ルケ ドメニコ・プロカッチ 酒井園子 原作 アレッサンドロ・バリッコ 『絹』 脚本 フランソワ・ジラール マイケル・ゴールディング 撮影 アラン・ドスティエ 編集 ピア・ディ・キアウラ 音楽 坂本龍一 出演 マイケル・ピット キーラ・ナイトレイ 役所広司 芦名星 中谷美紀 アルフレッド・モリナ 國村隼 (カラー/109分/カナダ・イタリア・フランス・イギリス・日本合作/SILK) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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