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テーマ:■ムービー所感■(484)
カテゴリ:日本映画
春の日差しを感じる日。ちらちら舞う雪のなか、雪解けのすすむ道を歩くと心地がよかったです。 木曜日はレディースデイ。予定もないし、はりきって劇場へと足を向けました。 この映画は、お世話になっているchappie the gogo!さんがずっと以前に紹介されていて、その日記がステキな内容で、公開になったら是非観にいきたいと思っていました。 そして観ながら思い出したのは、こちらもお世話になっているヤスカイさんが以前アップされていた日記。深い印象を残す、東京大空襲についての日記を思い出しました。 第二次大戦中、無差別爆撃を実行したB29搭乗の米兵を、略式裁判で処刑し、戦後その罪を問われB級戦犯として裁かれた東海軍司令官・岡田資中将。 部下を守り、自らの誇りを懸けて挑んだ法廷での闘いと、それを見守る家族との絆を描く。 B級戦犯として法廷に立ち、正義を貫き通して処刑された岡田資の半生。 反戦を訴えるだけでなく、戦争を媒体にして、生きること死ぬことを考えさせる、落ち着いた良作でした。 監督は「雨あがる」が素晴らしかった小泉堯史。 監督作「阿弥陀堂だより」にもあった、いかにして生き、いかにして死ぬかというテーマを、本作からも感じます。 日本人の美徳、死生観、仏教の教え――どれも監督の思想を色濃く反映しているのではないでしょうか。 裁かれるのは、爆撃されパラシュートで不時着したB29の兵士たちを、略式裁判で死刑に処した岡田中将の罪。 アメリカ兵への斬首は、罪か否か。 GHQの元で開かれる裁判は、有罪しかありえない様相を呈しますが、はたしてアメリカ軍の空爆は国際法に反していなかったか・・・? そう問う時、弁明できない大きな罪が姿を見せ始めるのですが・・・。 部下たちの信頼を一身に受けて、中将ひとりが罪を被る形で、判決が言い渡される後半。 それから亡くなるまでの1年4ヶ月は、短時間ながら、見事に描かれていました。 部下たちに、償いと正義を貫くこと、座禅を組み経を読みながら、悔いのない日々を送ることを、教え続けた岡田中将。 ほんとうの意味で罪を償うということは、こういうことなのでしょう。 信念に偽りない生き方をすれば、死を受け入れることは、難しいことではない。 彼のような悔いのない死を迎えることは難しいけど、でも生き様を観て学ぶことならできます。 遺される妻に認めた遺言には、涙が出てとまりませんでした。 情のある生き方が素晴らしかった。 愚かな争いは後を絶たないけれど、日本はあれから戦争をしていません。 戒めとして新しい世代が、こういう映画に触れていくことは、とても意義のあることだと信じたいです。映画の力はそういうところにもあるはずです。 岡田中将を演じた藤田まことは好演でした。キャスティングは成功しています。 静かに見守り尽くす妻を演じた富司純子も、台詞のない名演が光ります。 エンドロールを観るまで気がつきませんでしたが、聞きやすく落ち着いたナレーションを務めたのは竹野内豊。 検察官役のフレッド・マックィーンはスティーブ・マックイーンの息子さんだそうです。 久しぶりに満足いく、邦画の戦争映画でした。 小泉堯史監督は、古き良き日本映画の匂い残る作品を、撮ることができる数少ない方ではないでしょうか。 監督 小泉堯史 原作 大岡昇平 『ながい旅』 脚本 小泉堯史 ロジャー・パルヴァース 編集 阿賀英登 音楽 加古隆 ナレーション 竹野内豊 出演 藤田まこと ロバート・レッサー フレッド・マックィーン リチャード・ニール 田中好子 富司純子 蒼井優 加藤隆之 (カラー/110分/日本製作) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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