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テーマ:■ムービー所感■(484)
カテゴリ:日本映画
耽美主義というものが、私は好きなんだと思います。とても好みな作品でした。 映画を観てから、面白いと原作を読みたくなることが多いですが、こちらもそうなりそうです。 原作を読みたい気持ちにさせるかどうかも、映画の良し悪しを計るひとつの尺度となっています。 昭和13年の春。旧家の長女・鶴子(岸)と次女・幸子(佐久間)は、まだ未婚の妹たち雪子(吉永)妙子(古手川)の縁談に気を揉んでいた。おとなしい三女・雪子は皆の勧めで次々と見合いをするが、本人の気が進まず一向にまとまらない。一方、奔放な妙子は恋人が急逝し酒浸りになるのだった・・・。 耽美で甘美。この高鳴る気持ちは、現代文学には起こらないものだし、映画自体の風格や品も、とても貴重なもののように感じます。 2時間強と長いけれど、濃厚で、とにかく美しい女性たち。 四季折々、日本の美の原風景があり、言葉や着物、身のこなしの美しさは、目を見張るばかりでした。 上流階級の苦労、女である苦労、婿たちの苦悩・・・ともすれば滑稽に見える決まりきった生活でも、そこに生き生きとした血と涙を感じれば、いとおしく微笑ましい。 義理の妹である三女・雪子を、密かに恋しく思い、嫁がせたくない次女の夫・貞之助(石坂)。そして長女の夫さえ、密かに同じ気持ちでいる件が好きでした。 夫婦といえども、姉妹といえども、暗黙のうちに個人的な感情が存在しているのは普遍的。 誰が主人公であるというわけではなく、姉妹それぞれに思うところがあり、その個性を見事に描いていきます。 その上にさらに、義理の兄たちにも及ぶ、個性と心理描写が素晴らしい。 終盤、四女の奔放な恋が落ち着き、雪子の縁談もやっとまとまり、本家(長女一家)は東京への栄転が決まります。 お別れの日は爽やかで、清々しくてちょっと切ない。 雪子の結婚に、純粋に男泣きする石坂浩二を観て、初めていい男だと思いました。 手を抜いたところの感じられない、完成した見事な作品でした。脚本もとてもよかった。 監督 市川崑 原作 谷崎潤一郎 『細雪』 脚本 日高真也 市川崑 撮影 長谷川清 音楽 大川新之助 渡辺俊幸 出演 岸恵子 佐久間良子 吉永小百合 古手川祐子 伊丹十三 石坂浩二 岸部一徳 (カラー/140分) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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