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2008.03.29
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カテゴリ:日本映画

 耽美主義というものが、私は好きなんだと思います。とても好みな作品でした。
映画を観てから、面白いと原作を読みたくなることが多いですが、こちらもそうなりそうです。
原作を読みたい気持ちにさせるかどうかも、映画の良し悪しを計るひとつの尺度となっています。


 昭和13年の春。旧家の長女・鶴子(岸)と次女・幸子(佐久間)は、まだ未婚の妹たち雪子(吉永)妙子(古手川)の縁談に気を揉んでいた。おとなしい三女・雪子は皆の勧めで次々と見合いをするが、本人の気が進まず一向にまとまらない。一方、奔放な妙子は恋人が急逝し酒浸りになるのだった・・・。 


耽美で甘美。この高鳴る気持ちは、現代文学には起こらないものだし、映画自体の風格や品も、とても貴重なもののように感じます。
2時間強と長いけれど、濃厚で、とにかく美しい女性たち。
四季折々、日本の美の原風景があり、言葉や着物、身のこなしの美しさは、目を見張るばかりでした。
上流階級の苦労、女である苦労、婿たちの苦悩・・・ともすれば滑稽に見える決まりきった生活でも、そこに生き生きとした血と涙を感じれば、いとおしく微笑ましい。

義理の妹である三女・雪子を、密かに恋しく思い、嫁がせたくない次女の夫・貞之助(石坂)。そして長女の夫さえ、密かに同じ気持ちでいる件が好きでした。
夫婦といえども、姉妹といえども、暗黙のうちに個人的な感情が存在しているのは普遍的。
誰が主人公であるというわけではなく、姉妹それぞれに思うところがあり、その個性を見事に描いていきます。
その上にさらに、義理の兄たちにも及ぶ、個性と心理描写が素晴らしい。

 sasameyuki01.jpg sasameyuki04.jpg

終盤、四女の奔放な恋が落ち着き、雪子の縁談もやっとまとまり、本家(長女一家)は東京への栄転が決まります。
お別れの日は爽やかで、清々しくてちょっと切ない。
雪子の結婚に、純粋に男泣きする石坂浩二を観て、初めていい男だと思いました。
手を抜いたところの感じられない、完成した見事な作品でした。脚本もとてもよかった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 


 監督  市川崑
 原作  谷崎潤一郎 『細雪』
 脚本  日高真也  市川崑
 撮影  長谷川清
 音楽  大川新之助  渡辺俊幸
 出演  岸恵子  佐久間良子  吉永小百合  古手川祐子  伊丹十三
      石坂浩二  岸部一徳

  (カラー/140分)









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Last updated  2008.12.05 23:12:15
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