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行きかふ人も又

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2008.10.09
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カテゴリ:日本映画

 新しい仕事が始まる前の最後の自由な一日、やく一月ぶりに映画館へ行きました。
札幌のなかには、現在大小9つの映画館があって、うち6つの劇場へは足を運んでいます。
ミニシアター系が好きな私の視点からだと、一番イベントが多く、意欲を感じ上映作品が魅力なのは、狸小路にある「シアターキノ」です。料金体系は他と変わらず、カフェがついているのは魅力。
その次は、札幌駅の北口から徒歩3分にある「蠍座」。こちらはこだわりも多く、洗練された館内が素晴らしいです。料金は800円と安くて、2本連続で観ると1200円で観られます。ただ上映作品がシアターキノには敵わない。映画を買い付ける資金の問題もあると思いますが。カフェありは嬉しいコーヒー

今回は、シアターキノの『落下の王国』を観ると決めていましたが、狸小路で迷ってしまって(笑)上映に間に合いませんでした。『トウキョウソナタ』にも!
仕方がないので初めて行く札幌東宝プラザへ。
狸小路5丁目にあるこの映画館は、道すがらよく見かけてはいたけれど、二つしかないスクリーンでは観たい作品を上映することなく、一度も行ったことはありませんでした。
オープンしたのは大正14年というから、歴史のある映画館です。 上階の『プラザ1』は376席、地下の『プラザ2』は173席。今回は地下でした。上を覗きには行かなかったけれど、そちらはかなり大きくて昔ながらの劇場スタイル。いつかご紹介した『東宝公楽』に似た感じのようです。



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 というわけで、思いがけずポニョ
ノベライズ(というのかアニメーションの子ども向けの本)を読んだ限りでは、全くダメそうではなかったのに、いざ観るとやっぱりなにかが違う。
ポニョやそうすけは申し分なくかわいい。とくにポニョが人間になるシーンなんか、かなりいい。魔法を使う時、半魚人になちゃう姿もたまらなく可愛いし。
それでも作品全体が楽しいかと聞かれたら、ちょっと違った。

ポニョのお父さんが何者か、お母さんが何者か、舞台は未来か過去かもわからないまま、不思議なまま物語は終わる。それぞれにメタファーがあるという人もいるけれど、子ども向けに作られたこの映画にどんな思いを込めたのか、私にはわからなかった。
たとえば宮沢賢治は、表現手段に童話を使って、大人も子どもも理解できる世界を作り上げた。御伽噺のように動物が主人公でも、突拍子なくても幻の世界でも、語りたい大事な真意は自然に受け止められる。舞台が過去でも未来でも、仮の姿から透けて見える中心がまっすぐに届けば心は動く。
でもポニョは、肝心の真意が大人にさえわからない、子ども向けの皮を被った作品になってしまっているように思うのでした。

背景の説明はなしで、物語はぐんぐん動く。その力強さはすごい。けれどそれだけ。
映像の鮮やかさとか、遊び心とか、素晴らしい発想に感心した後、望むものはやっぱり、日常に溶け込んでくるような現実との繋がりだと思う。映画を観て、非現実の世界から日常がちょっとだけでも変われば、それは映画を知らない人生よりもずっと豊かだ。映画を観ることは小さな拾い物の連続だと思うから、楽しくなにか拾いたい。優しい人は、どんな映画からでもなにかを拾って帰るのだろうな。でも私は優しくないので、そんな自分にはちょっと残念な作品だった。







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Last updated  2008.10.09 22:30:19
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