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テーマ:■ムービー所感■(484)
カテゴリ:多国合作映画
狸小路『シアターキノ』にて観てきました。監督はターセム・シン、前作『ザ・セル』に次ぐ久しぶりの新作。前作と同様、映像へのこだわりは変わらず、イマジネーション溢れる物語は期待できそうな予感だった。 (あらすじ) 1915年、ハリウッド。撮影中の事故で重傷を負い、主演俳優に恋人を盗られ、自暴自棄となっているスタントマンのロイは、自殺願望にとらわれていた。ある日、腕を骨折して一時入院している5歳の女の子アレクサンドリアと出会い、ロイは思いつきの冒険譚を語って聞かせる。めくるめく物語にすっかり引き込まれていくアレクサンドリアだったが、物語を聞かせるのにはある秘密のワケがあった―――。 おもしろい。古き良き時代、1900年代初頭のハリウッドへ、冒頭からぐいぐいと引き込まれていった。 ロイの絶望など露知らず、アレクサンドリアは愛嬌ある無邪気さで彼と親しくなり、お話の続きを催促する。ロイが語って聞かせる物語は、世界24ヵ国以上でロケをしたという映像で綴られる、壮大な御伽噺。 病院にいる人間やロイやアレクサンドリアが一人二役で演じた物語の世界は、ダーウィンや山賊の登場する復讐劇のファンタジー。始めは取り留めないものだけど、ロイの自殺願望がピークを向えるにつれ、内容は現実の痛みを帯びたストーリーへと変化していく・・・。 生きる希望を見出していくまでも、イランから来たアレクサンドリアの悲しい過去も、じつにさりげない語り口だ。時には感情を爆発させても、作りものである高純度のファンタジーは、現実の辛ささえ空想の力を借りて乗り越えていく。 現実と空想を行き来し、ときに人形劇になったり、描き方の自由はまさに作り手の才覚。日本人のデザイナーが手がけた衣装が素敵に奇抜だったりするのも、私にはとても楽しめるものだった。 とにかくとりとめのない映画だというのはたしか。ビジュアルに頼る面は大きいし、繋がりの悪さを感じた箇所もあった。でもこれをハリウッドを舞台にした古き良き映画時代へのオマージュだと考えたらどうだろう。 昔の神業スタントシーンがふんだんに使われているのは、CGばかりの今のハリウッド映画に疑問を投げかけているよう。ビジュアル映画でも、素晴らしい絵面の数々は、じつに立派なものなのだ! 完璧な美を自然や遺跡に求め、4年の歳月をかけて映像化したという執念の賜物。斬新であっても手作り感があり、映画への愛を感じる。 すべてにおいて最高の珠玉の映画もあるけれど、音楽がいい傑作や、脚本がいい傑作や、役者がいい傑作があるように、映像がいい傑作、そんな映画があってもいい。 ロイが語るのは、アレクサンドリアを操って、毒薬を取ってこさせるため―――。 この本題から多少脇へ逸れたりして、一度では楽しみきれなかった感もあるので、DVDが出たらぜひ再見してみよう。それでも良いと感じたら、いつまでも人におすすめしたい映画になるような気がする。 ロイを演じた主演のリー・ペイスが素晴らしい! 監督・製作 ターセム 脚本 ダン・ギルロイ ニコ・ソウルタナキス ターセム 衣装デザイン 石岡瑛子 音楽 クリシュナ・レヴィ 出演 リー・ペイス カティンカ・ウンタルー ジャスティン・ワデル ダニエル・カルタジローン レオ・ビル (カラー/118分/インド=イギリス=アメリカ合作) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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