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2008.11.08
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カテゴリ:日本映画

 黒澤作品は3時間に及ぶ大作も多いけれど、いつも苦にならず時間を忘れさせてくれる。
もとのフィルムはさらに長大だったというから驚かされる。カットされて無駄の一切なくなった本編は、やっぱり見事としかいいようのない作品だった。

 【あらすじ】 江戸小石川養生所を舞台に、医師赤ひげ(三船)こと新出と、長崎帰りの青年医師・保本(加山)との師弟愛を軸に、8つの患者のエピソードを連ねる―――。

 『赤ひげ』は小学校のころ、芸術鑑賞会で演劇で鑑賞して以来だ。(古っ!)
赤ひげといえば、生活を顧みず治療に励む立派な医者の代名詞、そんな印象だけれど、それと同じくらい命の荘厳さに溢れた内容だった。山本周五郎の原作もきっと素晴らしいんだろう。

養生所に頼るしかない貧乏人たちばかりを看る、始めの頃、保本は望まぬ仕事に就いたと反抗してばかりいる。赤ひげのやり方が逐一気に入らない。しかし、患者や仲間の医者と接する毎日は、少しずつ彼を変えていくのだった。
現実を直視して、医者としての本当の使命を知ったとき・・・横暴なはずの赤ひげが尊敬すべき人間であることを理解してくる。彼の人間らしさは、観る側にも、徹底的に追及されたリアリティにのって、痛いくらいにたくさんを語りかけてくる。
そして貧困に喘ぐどん底の患者たちからは、気高い精神や命の荘厳さを見せつけられるのだ。

 akahige.jpg

虐げられて精神の病に罹った少女、おとよの一連のシーンが印象的。保本の懸命な看病で、次第に心を開いていくおとよが、反対に過労で倒れた保本を看病するようになる件では、大切な人を看るうちに着実に治っていく様子が見事に描かれていたと思う。彼女の真っ直ぐな心に何度泣かされたことか・・・。
演じているのは二木てるみ。とにかく素晴らしい演技をみせている。同じく保本を演じる加山雄三も素晴らしい。昔の加山さんはなんて美男子だったんだろう! 誠実な役柄が良く似合う。


人の命を預かる医者は偉いのか。それは偉いと、私は思う。養生所へ来たばかりの頃の保本のように、いい気になってインテリぶってさえいなかったら。
眠る暇もなく、根気がいって、一生学び続けて、強い精神と意思を持たなければ務まらない仕事。思いあがってはならないといったのは、ブラック・ジャックの先生の言葉だっけ。時には変な医者もいるけれど、しみじみお医者さまと元気に生きていることをありがたく思えてくる作品だ。
保本の結婚で爽やかに幕を閉じる『赤ひげ』。これが黒澤×三船の最後の作品となったそう。ふたりに何があったのだろう。


監督  黒澤明
原作  山本周五郎 『赤ひげ診療譚』
脚本  井手雅人  小国英雄  菊島隆三  黒澤明
音楽  佐藤勝
出演  三船敏郎  加山雄三  山崎努  団令子  ニ木てるみ
(モノクロ/185分)





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Last updated  2008.11.08 23:22:52
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