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テーマ:■ムービー所感■(484)
カテゴリ:イラン映画
以前、レンタル落ちVHSを大量買いしたときの一本。 キアロスタミ作品を幾つも購入して、その後なかなか観る気になれず、久しぶりのイラン映画となりました。 (あらすじ) サッカーが大好きな10歳の少年が、テヘランで行われる試合を観るために、両親をはじめたくさんの嘘をついて旅に出る、ささやかなロードムービー。 普段私たちが目にするイラン映画は、とにかく子どもたちが主人公のものが多い。日本人には健気さが受けるから、配給会社がその辺を中心に選んでいるからにすぎないのだそうだ。 わたしも健気さに心打たれているひとりなのだけど。 ただ思い出してみると、『私が女になった日』のなかの「アフー」や、『カンダハール』といった、大人たちが主役の素晴らしい作品もある。 こちらは、キアロスタミ監督の第二作目。 いつものことながら、大人は誰も助けてくれなくて、自分だけが頼りだ。ずる賢くなるのも、嘘をつくのも、この国で生きるには必要なこと。 生き生きして見えるのは、本当に自分の人生を自分で生きているからなんだろう。日本の若者が全体に生気なく見える理由も、そんなところにあるんだろう。 勉強は苦手で、母親には呆れられて、父親は当てにならない。いつしか大好きなサッカーの試合を、スタジアムで観ることだけが大きな希望となっている。 詐欺同然で作ったお金を持ち、夜行バスに乗り込んだ彼は、生まれて初めて感じた自由を味わっているようだった。 この一人立ちする感覚は、誰しもが経験したことのある、瑞々しいもの。 無事到着して、されどもう一波乱。 並んで求めたチケットは目の前で売り切れで、仕方なく、帰りのお金に手をつけてまでして、ダフ屋から高いチケットを買うのだ。そうしてようやく夢のスタジアムに入るけれど・・・・ 最後の最後に、やっぱりやるせない結末が待っている。 ハッピーエンドはこない。 少年は、興奮してまんじりともしなかった一夜が、きっと憎らしかっただろう。 試験の結果や、両親の怒りを考えたら、胃がキューっとなりそうなものだけど、でもきっと彼はこんなことではくじけずに、どうにかして来た道を帰って行くのだろうし、もとの生活に戻っていくんだろう。 イランの子どもたちのバイタリティはやはり良かった。ありきたりではない宝物だと大人にはわかるから、似たような試練物語が多いのだろうと、この度思う。 イランの大人たちは、実はそんな子どもたちを相当認めていて、大きな愛で包んでいるのかもしれない。 イラン人監督の視線が、いつも厳しくも温かいのはそのせい。 監督・脚本 アッバス・キアロスタミ 出演 マスード・ザンベグレー ハッサン・ダラビ (モノクロ/72分) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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