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行きかふ人も又

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2009.03.05
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 胃潰瘍に苦しんでいた漱石が大吐血をおこしたという、修善寺の大患。
それから一年半後に『朝日新聞』に連載をスタートさせた、後期三部作の第一作目。

短編の積み重ねが、ひとつの小説を形づくる、少し不思議な作品だった。
敬太郎という主人公がいつつ、章ごとがひとつの短編なので、友人・須永や、彼の従妹・千代子、それぞれの叔父たちなど、主人公が移り変わっていくように感じた。

一番のメインストーリーはともすると須永と千代子の関係。
須永が恋を前にしてぐずぐずと情けないようなのは、いままで読んできた漱石作品に共通する遊民男性陣の特徴で、好きだ。
もどかしいなぁとか思いながらも。
恋の局面を濁したまま、小説は終わっていくけれど、そんなところも異色な趣。


好奇心の強い敬太郎は、須永の叔父から色々話を聞き出すうち、傍からでは見えなかった高等遊民の生活や恋についてを知っていく。
始めて社会に出て大人の世界を見聞きした時、経験した好奇の気持ちと驚きは、敬太郎と似たような経緯を辿ったように思うし、多くの人がそうなのかもしれない。
だけど、敬太郎が見聞きしたことは滑稽で、ただ自分に丈真面目な行動に過ぎない――というのだから辛辣だ。

高等遊民の悩ましき日常に入り込むことができなかった敬太郎。
「そこが彼の物足らない所で、同時に彼の仕合せな所である」
いくら話を聞いても、添っても、ついには其中に這入れなかった――というのが、やはりなんとも冷たい、というか突き放したようでアイロニカルな締めくくりだ。



 (あらすじ) 地方から出てきて、大学を卒業したばかりの敬太郎は、就職活動に奔走し、苦労の末友人である須永の叔父の世話でやっと地位を得ることができた。 その縁故で須永や彼の叔父や従妹の千代子とも親しくなるが、元来好奇心が強い彼は須永と千代子にただならぬ中であることを感じる。 やがて、須永や彼のもう一人の叔父・松本の話を聞きく機会を得る―――。 







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Last updated  2009.03.07 10:14:02
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