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テーマ:■ムービー所感■(484)
カテゴリ:日本映画
いままで読んだ伊坂作品ははわずか三冊ですが、すべて外れがなく面白かった。7タイトル映画化されていて、今年は一気に三作が上映になるようです。 この、伊坂幸太郎の原作は大好きです。 物語は映画向きでも、時間軸を複雑に入れ替えた作品が多いので、その点映画化は難しいように思われる伊坂作品。でも、この『重力ピエロ』に限っては、一見単純そうに見える物語が孕んでいる、切なくて深いテーマを、登場人物たちの複雑な思いにのせて描ききれるのかが疑問でした。 だから期待はしなかったけれど、意外にもかなりこの映画化はいいです。 原作の切なさが損なわれてない。 読みながらも泣けてきたけれど、映画を観ながらも泣けてきた。 そんじょそこらにあるようなチープな切なさではなく、自分の存在が否定される苦しさや、肯定される喜びや、重力を忘れるくらいに幸せな家族のお話を、優しく力強く繊細に描いた素晴らしい物語でした。 内容はかなり原作に忠実なので、以前書いたこちらから。 弟の春という人物像が、大好きです。これほど好きになる人物像は、敬愛する佐々木丸美作品のなかにしか今までいなかった。 ガンジーを愛し、バタイユ(この件は本編には出ない)を憎む春。 彼の生き様は、胸が張り裂けそうになるほど立派で潔くてせつない。そんな彼を見守る、両親や兄・泉水(いずみ)の愛は底知れぬほど大きくて温かい。 ストーリーの軸は、近所で立て続けに起こる連続放火事件。 春と泉水は放火現場にリンクして出現するグラフィティアートとの繋がりを突き止めていく。 サスペンスやユーモアととも、にさりげなく描かれる家族のエピソード。やり場のない怒りを抱えて苦悩する家族の思いも、いつかじんわりと胸を打つ爽やかな感動に包まれる―――。 春役に岡田将生、泉水役に加瀬亮、父親役に小日向文世。ベストキャストです。 それぞれの演技が素晴らしい。 春の本当の父親である強 姦魔役には渡部篤郎。完全に悪役が板に付いちゃっていますが、久しぶりに本編で見れて嬉しかったです。かなり人でなしの役どころでしたが(笑) 誰にとってもそうとは言い切れないけれど、伊坂幸太郎は偉才なるストーリーテーラーです。 このお話が孕む様々に大切な諸々を、私はずっと忘れないでいたいと、心から思う。 監督 森淳一 原作 伊坂幸太郎 『重力ピエロ』 脚本 相沢友子 音楽 渡辺善太郎 出演 加瀬亮 岡田将生 小日向文世 吉高由里子 岡田義徳 渡部篤郎 鈴木京香 (カラー/119分) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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