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行きかふ人も又

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2009.07.03
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  1933年(昭和8年)に発表された短編。
ずいぶん前になりますが、アネモネさんがおすすめしてくれた作品です。

  ――盲目の三味線奏者・春琴に丁稚の佐助が献身的に仕えていく物語の中で、マゾヒズムを超越した本質的な耽美主義を描く。


 句読点や改行がなく、切れ間のない甘美な世界が続きます。
春琴にたいする佐助の生き様は、まさしくマゾヒズムでしたが、極致ともいえる在り方は、向うところ敵なしの揺るぎなさ。ここまでくればアッパレという、完成された関係でした。
一番の見せ場、火傷を負った春琴のために、自らの目を針で突き、望んで盲目となった佐助の一連の所業に関する描写が凄まじい。
こういうの、とても真似できないくせに憧れますね。

とはいえ、この関係は、佐助にとってマゾヒズムの充足でもあったのでしょうから、純粋さの裏にロマンチシズムが漂います。それは同じく春琴にもいえること。
子が出来ようと、歳を重ねようと、最後まで男女関係を認めなかった二人の、肉体と心の結びつきは、わざと濁してあるだけに、妄想が膨らむところです。
こんな関係が存在しえるものか、現実には考えもつかないけれど、究極の関係は映画むきで、すでに5度ほど、映画化されているようです。

甘い―――。
いつか『細雪』を読んだとき、ムズムズするような甘さがそこはかとなく匂って、あまり好きになれなかったはずでしたが、この『春琴抄』は好きでした。泉鏡花の『外科室』を髣髴とさせる。

このたび、古書で昭和文学全集を買って読みました。
ほかの谷崎作品が楽しみになったし、芥川龍之介を読んでみるのも、なんだか楽しみです。
こういう本は買う人が少ないらしくて、手に入りやすい。寝室で読むには重たくて不向きだけれど、ガッシリな装丁が好み。写真ではわかりにくいけど、頁の上部が金色に塗られていてゴージャスなのです。







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Last updated  2009.07.04 17:44:20
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