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テーマ:■ムービー所感■(484)
カテゴリ:多国合作映画
大好きな『アマデウス』の監督、ミロス・フォアマン監督の新作です。 先日の『ドイツ・ショート』でゴヤに触れてから、気になっていた本作をさっそく借りてみました。 原題・邦題ともに、タイトルにゴヤの名はつくけれど、内容はスペインで15世紀の終わり頃から始まった、異端審問が引き起こす悲劇が主。 ゴヤが生きたのは、1746年~1828年。 モーツァルトを見事魅力的に描いた監督らしく、ゴヤの人物像もなかなかに魅力的、ではありましたが、いかんせん主役ではありません。 そのかわり、ロレンソ神父を演じたハビエル・バルデムが、存在感抜群に熱演しています。 18世紀末のスペイン、商家の娘イネス(ナタリー・ポートマン)は無実の罪で異端に問われ、囚われの身となった。 彼女を助けるべく奔走する家族は、共通の知人である画家ゴヤに、異端審問所に近しいロレンソ神父との面会を取り次いでくれるよう頼むのだったが・・・。 一向に釈放されぬまま、異端者の監禁はつづき、スペインは波瀾の時代へと突入していく―――。 激動のスペインを描いた、セットも雰囲気もとてもすばらしい。ロレンソ神父の波瀾に満ちた人生が、劇的すぎはしますが、かなりおもしろいです。 教会を裏切り、ナポレオン政権の大臣となり、しまいには教会に戻る機会を与えられるも、赦しを求めず、神を信じぬまま、死刑になった男・・・。 そのすべてを見ていて、時に関わらざるをえなかったゴヤは、けして存在を誇示することはありません。 アピールするのは、絵画だけ。 合間合間に、まるで時代を象徴するように映し出されるゴヤの絵画。それが18世紀末のスペインを雄弁に語ってくれるのです。 監督が、ゴヤという強い個性の画家を描いた意味がよくわかる。彼の目を通した物語にしたからこそ、ここまでの作品になったのでしょうね。 絵画を背景としたながーいエンドロールも、ゴヤ一色です。 ロレンソ神父は聖職者でありながら、牢の中で出会ったイネスの純真な美しさに溺れてしまった。 拷問によって憔悴しきった、藁をも掴みたいイネスを、姦淫の罪を犯し、愛してしまった。 ふたりの間に愛があったはずはなく、慰み者となったイネスは、獄中で彼の子を産み、釈放されるころには精神を病み、盲目的にロレンソを信じるようになるのです。 ナタリー・ポートマンは、私的に惹かれなくて、どんなに変わり果てた姿を演じようとも、なかなか心が動きません。もし彼女じゃない女優が演じていたら、もっと打たれていたかもしれないと思うと残念。ついぞシビアになってしまいます。 この作品、世間ではすこぶる評判が良いです。久しぶりのフォアマン作品だし、思い入れが違う人もいるのかもしれません。 私としては、絶賛したいほどではなかったかな。 おまけ。 銅版画を作成する工程を描いた一連のシーンが、すごく良かったです。物語に直接は関係ないけれど、そこだけでも観た価値がありました。 『アマデウス』のようなユーモアが、もうすこしだけでもあったらよかったのに! 監督/ ミロス・フォアマン 製作/ ソウル・ゼインツ 製作総指揮/ ポール・ゼインツ 脚本/ ミロス・フォアマン ジャン=クロード・カリエール 撮影/ ハビエル・アギーレサロベ 編集/ アダム・ブーム 音楽/ ヴァルハン・バウアー 出演/ ハビエル・バルデム ナタリー・ポートマン ステラン・スカルスガルド ランディ・クエイド ミシェル・ロンズデール (カラー/114分/アメリカ=スペイン合作) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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