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2009.12.16
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カテゴリ:ポーランド映画

 キェシロフスキの『デカローグ』シリーズ、DVD4枚目に収録されているのは、第7話・第8話目。
作品の概要については、こちらからどうぞ。


 第7話『ある告白に関する物語』 

 a82e040f01e602aa.jpg 

 ワルシャワ郊外の住宅地、とあるアパートのとある家族。
娘は高校を退学して、パスポートをとり、なにかの準備をしているらしい。5歳になる妹は、毎晩怖い夢をみてうなされて泣くが、彼女があやすと、母親は「あなたには無理よ」とキツクしかる。
所在なげに泣く娘、、、。
いったい、この家族になにが起こっているのか、見ていくうちクリアになってくる。

じつは、妹と思っていた少女は、娘の実の子どもで、母親はそれを認めずに我が子のようにして育てているのだった。赤ん坊の父親は、当時母が学校長だった高校の元教師。
出産をもみ消し、自分の子どもとして赤ちゃんを育てた母を、娘は強く憎み、二人の関係には軋轢が生まれ、今にも崩壊しそうな関係が危うく描かれていく―――。

キェシロフスキが巧いのは、たった1時間弱の物語のなかで、主人公のこれまでの人生と、これからの人生を観客に無限に想像させてしまうこと。
彼女の堪えきれない苦しみを、無鉄砲な行動から感じ取り、危うい言動からは幼さを感じる。

子どもを抱え、誘拐同然に母の元から逃げる娘は、4・5年ぶりの再会となる父親である元教師の元に転がりこむ。
ふたりに愛などないのは、救いなのか否か、、。
責任を感じて彼女たち母娘を保護しようとする彼にも、無鉄砲を留まらせることはできず・・・あるのは切ない別れが、ただあるのみ。
22歳と言ってた娘の、これからの孤独な人生を思うと、胸がギュッとなる物語。まだ若いから、なんとかなるのかもしれないけれど、特異なシチュエーションとはいえ辛い選択だった。



 aab9a2dc9a4b0b00.jpg  第8話『ある過去に関する物語』

 ポーランドの監督にしては珍しく、といっていいのかわからないけれど、キェシロフスキはナチス侵攻下のポーランドをほとんど描かなかった。
敬愛するワイダは、最新作 『カティンの森』 でも、まだあの辛い時代をテーマにしている。この違い、どちらが良いということなく、わたしはどちらもそれぞれに好き。

そんなキェシロフスキが珍しく、ポーランドのあの暗い過去の歴史をテーマに描いた一篇。
静かに暮らす老教授の前に、ある日アメリカから、ひとりのジャーナリストが訪れる。
彼女の著作に興味があると話すその女は、大学の講義に顔を出し、思いがけない過去の出来事を聴衆の面前で話し始める―――。

それはナチス侵攻下のポーランド、当時身寄りのなくまだ幼なかった自分を、屋根裏に匿うことを拒否した人物との、苦い思い出だ。
その拒否した人物こそ、若き日の教授で、彼女はあの時の出来事を忘れていない。何十年の時を経て、ふたりは過去と向き合うことになる。

とてもストイックに映る教授は、過去の判断を悔いて生きてきた。救う者救われる者の間に、いったい何があるのか、女はただ本人の口から教えてもらいたくてここまで来た。
それぞれの人生には月日による重みが増していて、本心から過去を語り合える関係が持たれていく様を、冷静な視点で描いたいい一編だった。
神を信じなくとも、その先に空虚感はない―――主人公を通して、神の不用を物語るシーンが印象的。





監督/ クシシュトフ・キエシロフスキ
脚本/ クシシュトフ・キエシロフスキ   クシシュトフ・ピエシェヴィッチ
音楽/ ズビグニエフ・プレイスネル
出演/ クリスティナ・ヤンダ  ダニエル・オルブリフスキー  ズビグニエフ・ザマホフスキー

(カラー/567分/DECALOGUE)





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Last updated  2009.12.18 06:40:20
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