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テーマ:■ムービー所感■(484)
カテゴリ:ポーランド映画
キェシロフスキの『デカローグ』シリーズ、DVD4枚目に収録されているのは、第7話・第8話目。 作品の概要については、こちらからどうぞ。 第7話『ある告白に関する物語』 ワルシャワ郊外の住宅地、とあるアパートのとある家族。 娘は高校を退学して、パスポートをとり、なにかの準備をしているらしい。5歳になる妹は、毎晩怖い夢をみてうなされて泣くが、彼女があやすと、母親は「あなたには無理よ」とキツクしかる。 所在なげに泣く娘、、、。 いったい、この家族になにが起こっているのか、見ていくうちクリアになってくる。 じつは、妹と思っていた少女は、娘の実の子どもで、母親はそれを認めずに我が子のようにして育てているのだった。赤ん坊の父親は、当時母が学校長だった高校の元教師。 出産をもみ消し、自分の子どもとして赤ちゃんを育てた母を、娘は強く憎み、二人の関係には軋轢が生まれ、今にも崩壊しそうな関係が危うく描かれていく―――。 キェシロフスキが巧いのは、たった1時間弱の物語のなかで、主人公のこれまでの人生と、これからの人生を観客に無限に想像させてしまうこと。 彼女の堪えきれない苦しみを、無鉄砲な行動から感じ取り、危うい言動からは幼さを感じる。 子どもを抱え、誘拐同然に母の元から逃げる娘は、4・5年ぶりの再会となる父親である元教師の元に転がりこむ。 ふたりに愛などないのは、救いなのか否か、、。 責任を感じて彼女たち母娘を保護しようとする彼にも、無鉄砲を留まらせることはできず・・・あるのは切ない別れが、ただあるのみ。 22歳と言ってた娘の、これからの孤独な人生を思うと、胸がギュッとなる物語。まだ若いから、なんとかなるのかもしれないけれど、特異なシチュエーションとはいえ辛い選択だった。 第8話『ある過去に関する物語』 ポーランドの監督にしては珍しく、といっていいのかわからないけれど、キェシロフスキはナチス侵攻下のポーランドをほとんど描かなかった。 敬愛するワイダは、最新作 『カティンの森』 でも、まだあの辛い時代をテーマにしている。この違い、どちらが良いということなく、わたしはどちらもそれぞれに好き。 そんなキェシロフスキが珍しく、ポーランドのあの暗い過去の歴史をテーマに描いた一篇。 静かに暮らす老教授の前に、ある日アメリカから、ひとりのジャーナリストが訪れる。 彼女の著作に興味があると話すその女は、大学の講義に顔を出し、思いがけない過去の出来事を聴衆の面前で話し始める―――。 それはナチス侵攻下のポーランド、当時身寄りのなくまだ幼なかった自分を、屋根裏に匿うことを拒否した人物との、苦い思い出だ。 その拒否した人物こそ、若き日の教授で、彼女はあの時の出来事を忘れていない。何十年の時を経て、ふたりは過去と向き合うことになる。 とてもストイックに映る教授は、過去の判断を悔いて生きてきた。救う者と救われる者の間に、いったい何があるのか、女はただ本人の口から教えてもらいたくてここまで来た。 それぞれの人生には月日による重みが増していて、本心から過去を語り合える関係が持たれていく様を、冷静な視点で描いたいい一編だった。 神を信じなくとも、その先に空虚感はない―――主人公を通して、神の不用を物語るシーンが印象的。 監督/ クシシュトフ・キエシロフスキ 脚本/ クシシュトフ・キエシロフスキ クシシュトフ・ピエシェヴィッチ 音楽/ ズビグニエフ・プレイスネル 出演/ クリスティナ・ヤンダ ダニエル・オルブリフスキー ズビグニエフ・ザマホフスキー (カラー/567分/DECALOGUE) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2009.12.18 06:40:20
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