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テーマ:本のある暮らし(3315)
カテゴリ:本
『家人屋外にあるを大声にて呼べど応えず ために癇癪起りやけ腹になりて牛乳餅菓子などを貪り腹はりて苦し 家人屋外にありて低声に話しをるその声は病床に聞ゆるに 病床にて大声に呼ぶその声が屋外に聞えぬ理なし それが聞えぬは不注意の故なりとて家人を叱る』 一番こころに残った一文。肺結核からくる脊椎カリエスで、晩年ずっと寝たきりだった子規と、家族の様子が浮かんでくるようで。 子規が抱えた、死への恐怖や、自由の利かない苛立ち、もどかしさ。 それと同時に、感情を受け止め献身的な介護を続けた家族の苦労。たまには聞こえぬふりして、病人を放っておきたいことも、ニ度や三度はあったろうなぁと。 バイタリティ溢れる子規の、死を眼前にしてなお生きることに貪欲な姿が、脅威的だった。 食べたもの・便通・訪れた友のこと―――。 寝たきりで、人の来ぬ日の楽しみは食だけ。ものすごい執着で、美味しいもの食べておかんとする姿には、驚いてしまう。けれど、食べて排泄することは生きることそのもの。 一連の記述に、そこはかとない哀しさが漂っている。切ない、哀しい。 子規が死の前年の明治34年9月から死の直前まで、俳句・水彩画等を交えて赤裸々に語った稀有な病牀日録。現世への野心と快楽の逞しい夢から失意失望の呻吟、絶叫、号泣に至る人間性情のあらゆる振幅を畳み込んだエッセイであり、命旦夕に迫る子規の心境が何の誇張も虚飾もなくうかがわれて、深い感動に誘われる。 (「BOOK」データベースより) 最近、欠かさず観ているドラマ『坂の上の雲』で、正岡子規を演じているのは香川照之。かなり濃い役者さんゆえ、ナイスなキャスティングです。 子規の妹・律を演じるのは、菅野美穂。それにしてもこの二人だけが、ドラマの中でまぁよく泣くのでした。 ナレーションを含む、男優陣の顔ぶれは圧倒的! 層の厚さに嬉しくなってくるよう。 反面若手の演技派女優さんは少なくて、女優魂を感じることも、めったになくなってしまったなぁ。 好古の妻を演じる、松たか子だけは相変わらず巧い。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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