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テーマ:本のある暮らし(3315)
カテゴリ:本
最初の20世紀少年イナガキ・タルホのシネマトグラフへの憧憬が結晶する、夢の映画100年記念アルバム。 (「MARC」データベースより) 足穂氏が書いた映画論をみつけて、いつか手に入れ積んでおいた本。 1900年生まれの足穂さんは、映画創成期に育って、心底活動写真に魅せられたにちがいない。当時を振り返って、熱い思いを語っておられる。 ≪メカニズム愛好家≫だから、活動写真の魅惑にとり憑かれるのもわかります。 1925年~1975年まで50年間にわたって発表した、映画に関するエッセイと小説を収録しているというので、古典映画の解説や、当時のノスタルジックな出来事を聞かせてもらえるのかと思いきや、、、創成期にトキメイたままの視点で、ずっと回顧モードなのでした。 笑ってしまうほどメランコリックに、もう映画は映画でなくなってしまった・・・!と嘆かれるのでした。 急速に発展・変化していった映画は、たしかにこの100年あまりで驚くほどの進化を遂げたと思います。足穂氏の知っている時代を、いち映画ファンとして、経験してみたかったな~とも思うけれど、氏が繰り返し「堕落した!!」と嘆き続けるのは、映画ファンにはちょっと淋しい。 「劇場から出てくる人々は、一様にしてぞうきんで顔を拭ったようだ」 ・・・・・・ってなんですと!! そんなことはないない。たしかに味わいは消えていったろうけれど、心躍らせ、いい顔をして出てくるお客もいっぱいいることでしょう。 毒舌に、苦笑いの頁も多かったことは否めません。 ただ、わたし自身、昔に通った小さな劇場を思い出せば、タルホさんが抱くノスタルジアと同様の想いがすることに気づくのだけれど。。 ちなみに、わたしが映画を観はじめたのは1980年代後半でした。80年~90年代に作られた作品は、やはりなにかと思い入れ深い。 幼少期、青春期、それぞれに記憶に焼きついた作品が、映画ファンには必ずあるのではないでしょうか。 タルホさんがラリー・シーモンに心酔するのと似たように、わたしが子どもの頃、衝撃を受けた初めての映画は忘れもしない『ポセイドン・アドベンチャー』と『グーニーズ』でした。 現在公開中なのは、なんと3D作品。映画の進化は続いているのだなぁとしみじみ思う。 CGの誕生さえ、まださして昔ではないのに、もう時代は次に突入してしまったのだなぁ。 しかも、「これでいいのかしら・・・」と思ってしまう保守的な自分がいることも否めない。 CG満載作品が増えて、それに幾らかの冷ややかな目線を注ぐようになったいま、変わらずに映画は大好きだけれど、それこそ「味わいがなくなった」と怒ったタルホさんは、こんな気持ちだったのかもしれません。 でも嘆いたって仕方がない。立ち止まってしまってはもったいない。映画は相変わらずおもしろいもの。 なんだかんだと文句を言いつつ、タルホさんが劇場通いを止めなかったらしいことを知って、ホッとうれしい気持になる。 古いものは味わい深いし、新しいものは受け入れがたく、文句のひとつも言いたくなるかもしれないけれど、これからも映画の進化を見ていけるのなら嬉しいと思う。 あと半世紀観続けることはムリだろうかー。 数十年後、同じように回顧に沈み、今どきの映画は云々!!と毒づいていませんように。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2010.01.27 23:10:16
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