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行きかふ人も又

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2010.02.01
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カテゴリ:多国合作映画

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  わずか14歳で残忍な殺人鬼の犠牲となり天国へと旅立った少女スージー・サーモン。
残された家族の崩壊と再生を見守りながら、自らも悲劇を乗り越えていく姿を、優しい眼差しでファンタジックかつサスペンスフルに綴る―――。



 予告で『ゴースト/ニューヨークの幻』再来?・・・と勝手に思い込んでいたが別ものであった。
激しい感涙は90年代の輝かしい名作に譲り、こちらは、『ブレインデッド』『乙女の祈り』のピーター・ジャクソン監督らしく、サスペンスフルで軽くダークな作品に仕上がっていた。


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予告で目にする鮮やかな世界は、殺されたスージーが辿りつく天国。
そこは彼女にとっての理想郷であり、正確にいえば天国の手間のようなところで、同時に煉獄のようだ。
たくさんを思い残したまま14歳で無惨に殺された彼女には、死を受け入れることも、家族と離れることもできなくて、犯人への憎しみは増すばかり、、。仏教的にいうと成仏することができない。

死を描いた作品は、死生観が自分に近いぶんだけ感情移入しやすく、本作の死後の世界はなかなか違和感のない世界で好きだった。
すこし幼稚に感じるのは、スージーがまだ14歳で、彼女にとっての天国だからだろう。
時折、悪夢のようにユートピアに翳りが差すところもまた好み。
不思議大好き、ダークサイド大好きなジャクソン監督らしく(笑)、変にしみったれた作品になっていない、独自の宗教観・死生観がよかった。


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犯人は冒頭からわかっているけれど、男の過去や、次にスージーの妹が狙われることで、気が抜けない展開になっていく。
しかも家族はバラバラで、喪失感から立ち直れない両親の姿は痛々しい。

最終的には、『ゴースト』のような劇的な奇蹟は起こらないし、死者と生者が意思の疎通を持てることもない。現実とはそういうものだ。
それでも、是が非でも伝えたい想いは、強く念ずることや生ける者の執念で、もしかしたら伝わり、叶い、報われることもあるのかもしれない・・・・・。
悪は滅び、愛は勝つ。希望の一端にかろうじてしがみ付いて、幸せが見えるラストが救い。

殺されて、まるで煉獄のような世界にいたスージー。安直に<死=お花畑的天国>ではないところに、監督の伝えたいことが描かれているみたい。
殺された者は、死を受け入れらず、犯人を激しく憎悪して、きっと簡単に成仏なんかできないはずだ。それが本人や遺族にとってどれほど理不尽で苦しいことかを、痛感する物語だった。
感動作とあるけれども、一度も涙は流れなくて、死んだ者も生きてる側も乗り越えなくてはいけない赦しや諦めに心打たれたお話だった。



●  ●  ●  ●



監督/ ピーター・ジャクソン
原作/ アリス・シーボルド 『ラブリー・ボーン』
脚本/ フラン・ウォルシュ  フィリッパ・ボウエン  ピーター・ジャクソン
撮影/ アンドリュー・レスニー
音楽/ ブライアン・イーノ
出演/ マーク・ウォールバーグ  レイチェル・ワイズ  スーザン・サランドン
スタンリー・トゥッチ  シアーシャ・ローナン

(カラー/135分/アメリカ=イギリス=ニュージーランド合作)






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Last updated  2010.02.05 18:47:47
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