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テーマ:■ムービー所感■(484)
カテゴリ:日本映画
黒澤明が、自分の見た夢をもとに撮りあげたオムニバス。 全8話の構成で描く、幻想と映像美の世界――― この作品は、黒澤映画のなかでも、特に長いこと見たい気持ちになれなかった。 怖そうで。 ホラー作品や人間ドラマにある怖さじゃなく、畏れに近い。いい心持ちには、絶対なれないとわかっているんだから。 大人になって黒澤作品に触れていくうち、ようやく享受できる用意ができた気がして、やっと鑑賞してみたら、やっぱり想像していたとおり怖いし、恐ろしい。 けれど、監督が自らの夢にかぶせて伝えたいと思った、反戦や反核のメッセージは、立派に観る者の心を動かす異色な良作だった。 だれがこんな形で、夢を映画にしてしまえるというのだろう。世界の黒澤にしかできない所業だろうと思う。 しかも、殆どが恐ろしすぎる悪夢で、人類に警鐘を鳴らす形のオムニバスなのだ。 楽しむどころじゃなく、ただただ胸を抉られる感覚で、胸をさすってやりつつ見終える。 「日照り雨」「桃畑」「雪あらし」「トンネル」「鴉」「赤富士」「鬼哭」「水車のある村」 この8つのなかで、唯一ほっとできるのは「鴉」と最後の「水車のある村」。 「鴉」は、ある画家が美術館でゴッホの絵画を眺めるうちに、絵のなかに入り込んでしまう――というお話。 ゴッホ役はなんとマーティン・スコセッシが演じている。 「水車のある村」は、お歳を召した笠智衆さんにほっとさせられた。 村の賑やかな葬式が羨ましくて、自分もこんなふうに踊りながら愉快に送り出してもらえたら、きっと幸せだろうな。 少しは気を抜けたのが二話目「桃畑」。けれど、桃の木を切り倒す人々への苦言でもあるわけで、しかもかの有名な雛壇を模したおっかないほどの超絶ロングショットが、おそろしく奇麗であり、奇麗だからこそ怖いので困る(笑)。 「トンネル」 『どですかでん』を彷彿とさせる、奇抜な色遣いは、効果的に畏れを煽って、どこまでも怖かった、、、。 映画としては、とても楽しいものでないし、教育されている感覚があって、おちおちしていられないけれど、ある程度黒澤監督のファンになったあとでなら、楽しめるのではないでしょうか。 はじめから本作を観てしまった方は、、、お察しします。 画家・黒澤明が全面に出ている一本でした。 特殊撮影はアメリカのインダストリアル・ライト&マジック(ILM)が担当、スピルバーグとルーカスが製作に協力しています。 世界配給はワーナー・ブラザーズだったそう。 監督・脚本・編集/ 黒澤明 製作総指揮/ スティーヴン・スピルバーグ 衣裳/ ワダ・エミ 音楽/ 池辺晋一郎 出演/ 寺尾聰 倍賞美津子 原田美枝子 根岸季衣 井川比佐志 いかりや長介 笠智衆 マーティン・スコセッシ (カラー/121分/日本=アメリカ合作) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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