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行きかふ人も又

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2010.03.28
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カテゴリ:日本映画

 

 『天然コケッコー』が超ほのぼのだったので、同じ中学生なのに、両者のギャップに驚いてしまう。
時代背景は現代でも、どことなく懐かしい邦画の味わい。SABU監督の人柄が出ているのかな。

 西日本のとある町。町は、干拓地にある集落「沖」と干拓以前からの集落「浜」に分かれていた。
「浜」に一家四人で暮らしているシュウジ(手越)は、四つ年上の物知りな兄・シュウイチが好きだった。
中学生になったころ、シュウジは「沖」に住む、殺人犯と噂される教会の神父(豊川)や、両親が自殺し深く傷ついたエリ(韓)と交流を持ち始める。
しかし、高校生になった兄の精神は少しずつ壊れはじめ、「浜」では再開発が始まり、均衡の崩れた町から、物語は悲劇にむかって疾走していく―――。

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画面の力に、冒頭から釘づけでした。
手越くんをはじめ、ヒロインの韓英恵ちゃんも、豊川悦司の抑えた演技も、なにもかも引き込まれる魅力を持っていました。
舞台がなにしろ不思議で、「浜」と「沖」はむかしの被差別部落みたいだし、作品に流れている重みは、最近にはない懐かしさでした。

気がつけば、すでに手遅れで、もうどんなにしても取り返せないほど、関係の悪化していく人間たちが悲しくて、辛くて、痛かった。
みんなして傷ついて、不器用に繋ぎとめながら、どうにか生きている姿に、泣けてきました。
子どもにとっては、あまりにも過酷な運命を抱えたシュウジとエリ。ふたりは聖書を開いて、神父さまの言葉を励みに、運命に必死に立ち向かおうとしている―――ただその姿を見るだけでさえ、苦しく切ないのでした。


特別弱い両親に育てられた女の子は、孤独と義父からの暴行にずっと耐えてきました。幸せに見えていたシュウジの家族は、優秀だった兄が壊れ始めたことで、簡単に崩壊してしまいました。
大人に守られることのない子どもらが行きつく先は、大都会東京の夜のブラックホール。
すでに軌道を逸した純真な魂は、悪い大人を傷つけながら、運命を変えることの叶わぬまま、短い生を終わらせてしまいます・・・・・。


それぞれに抱えた闇は大きい。神父様でさえ、弟を殺人者にしてしまった罪を抱えて、罰と向き合い苦しんでいます。
長大な原作にはきっと、更に重苦しいエピソードが連なっているのでしょう。
近年では稀に見る、奥深な青春映画。骨太で、とにかく懐かしい匂いのする。
手越くんの表情、豊川悦司のナレーションに胸を打たれて、久しぶりの感覚を味わいましたよ。
ずっと気になっていたSABU監督の作品。見て良かったです。



●  ●  ●  ●



監督・脚本/ SABU
プロデューサー/ 三木裕明
原作/重松清 『疾走』
音楽/ S.E.N.S.
出演/ 手越祐也  韓英恵  中谷美紀  豊川悦司

(カラー/125分)







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Last updated  2011.05.24 17:02:04
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